イノベーションのジレンマ

MIS という授業で、Web2.0についての説明がありました。Web2.0についていくつか定義があったような気もしますが、作成者、閲覧者を含めたあらゆる意味でのユーザー間のインタラクションの上に成り立つWebといったようなイメージだと理解しています。
授業では、ブログ、Wiki、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、オープンソースなどがトピックとして取り上げられていました。
先生が、「これは Evolution だと思うか、それとも Revolution だと思うか」といった形で意見を聞いたところ、Revolution だと答えている人もいれば、単なる進歩に過ぎないといったニュアンスで答えている人もいました。
これはEvolutionだ、とか、Revolutionだ、とか意見を言うのはやさしいですが、各自が実際どの程度理解した上で言っているかという点が重要だと思います。ブログをただのWeb上での日記でしょ、と理解している人もいれば、トラックバックやコメントなどを含めてWeb2.0の枠組みでとらえ、大きなビジネスチャンスを見出している人もいるかもしれません。
授業でも取り上げられていたのですが、ハーバードビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセンによる「イノベーションのジレンマ」という考え方があります。今までも何度も目にはしていた言葉なのですが、お恥ずかしながら説明を読んだことはありませんでした。そこでちょっと調べてみたところ、以下のような記事を見つけました。

 ハーバードビジネススクール教授のChristensenは、優良企業がトップの座から落ちる理由について独自の理論を発表し、大きな話題となった。優良企業の悲劇は、重要顧客の声に耳を傾け、最も収益性の高い分野に投資するという健全な経営手段に端を発しているという。
この原理は、1997年に出されたChristensenの著書「イノベーションのジレンマ−技術革新が巨大企業を滅ぼすとき(原題:The Innovator’s Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail)」の中で、初めて明かされた。本の中でChristensenは、競争力を維持し、顧客を重視し、研究開発への投資を行っている優良企業が、努力の甲斐もなく市場優位性を失っていく理由を徹底的に分析している。
 Christensenは多くの業界についての分析結果を示し、Digital Equipment Corporation(DEC)に代表されるかつての優良企業がトップの座から落ちるのは、競合他社が強くなったためではなく、むしろ一見取るに足らないような、あまり質の高くないソリューションを提供する新規参入企業が現れたためだと結論づける。
 大手企業は一般的に、要求度の高い顧客のニーズに応えるため、より高機能な商品の開発に力を入れる。この性能向上を求める絶え間ない努力を、Christensenは「持続的イノベーション」と呼ぶ。
 「技術進歩のレベルが顧客の実際のニーズと活用能力をはるかに超えると、行き過ぎが裏目に出る。新興企業に、より安く単純で、高機能を必要としない顧客から見れば十分な性能を持つ商品を提供する機会を与えてしまうのだ」と、Christensenは言う。そして、これを「破壊的イノベーション」と名づける。

こちらのサイト http://japan.cnet.com/interview/story/0,2000055954,20060205,00.htm からの引用です。
重要顧客に対するビジネスがうまくいっているがために、新しいビジネスモデルでもって算入してくる競合他社(破壊的イノベーター)を軽視してしまい、あれよあれよという間にシェアを奪われてしまうことがあるようです。重要顧客に対するビジネスおよびそれに対する投資というのは、パレートの法則を考えて、重要部分にのみ投資していると見ることができるかもしれません。
上記の記事によると対処法としては以下のように書かれていました。

破壊的イノベーターを相手に巻き返しを図るためには、大企業は子会社を設立し、しかもその子会社に親会社を脅かすほどの自主性を与える覚悟が必要です。

これもどこかで見たことがある光景のような気がします。 「親会社を脅かすほどの自主性」というのがキーワードかもしれません。
そして、「イノベーションのジレンマ」はパレートの法則で言うところの重要部分のみを重視しすぎるがために、パレートの法則の逆の側面である「ロングテールの法則」を無視してしまった結果、と見ることもできるかもしれません。「ロングテールの法則」というのは以下の記事が参考になるかと思います。

 一方、「ロングテールの法則」は、売れ筋以外のごくたまにしか売れない商品の総合計が売れ筋による売り上げを越える売り上げを作る。つまり、チリも積もれば山となる、というビジネスの一面を語る法則として使われます。
 実際、店舗を構える一般大型書店の品揃えが平均13万点なのに対し、アマゾンのそれは230万点といわれます。また大型書店の売上高の大半がベストセラーに代表される売れ筋商品に集中しているのに対し、アマゾンは売れ筋以外の商品の売上高が実に3分の1を占めるといわれます。

こちらはhttp://bizplus.nikkei.co.jp/colm/nakajimat.cfm?i=20070109ck000ckからの引用です。
ある時、破壊的技術(disruptive technologies)が世の中に出現し、それをうまく活用できた企業が、ロングテールにころがっているビジネスをすべて拾うことが出来る。そして、その破壊的技術の重要性に気づかない、気づけない(気づいても新規投資を行えない)ような、業界のリーダー的企業はいつの間にか、その新興企業によってその存在を脅かされるようになる、ということでしょうか。
うーん、難しい問題ですね、、、
ウェブまわりの話は以下の本が参考になるかと思います。って、まだ個人的には読み終わっていないのですが、、、
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
梅田 望夫
4480062858

3 件のコメント

  1. bancho@sussex 返信

    面白いですね!
    ちょっと思い出したのですが、・・・といってもレベル低い話で恐縮ですが、音楽業界でも、トップミュージシャンがコアファンの期待に応えてサウンドの技術面に力を入れすぎた結果、素晴らしいアルバムが出来た。しかし大衆の支持は新しいミュージシャンの「耳馴染みの良い、カラオケで歌いやすい曲」に流れてしまった・・・なんてこと、たまにあるんですよ。
    その場合、トップミュージシャンはどうしたら良かったのか・・・?「親会社を脅かすほどの自主性を持つ子会社」?プロデューサーに転向するのか?それとも氣志團→DJ OZMAのように別バージョンを考えるのか?
    あまりにレベルが落ちたので、この辺でコメント止めておきます(笑)

  2. f 返信

    Web2.0についてですが、
    私は、技術者なので技術の目でみると、
    「Evolutionの寄せ集めをweb2.0と名づけたことが
    Revolutionである」といえます。
    web2.0をとりまく技術は、古く、
    インターネットがブラウザというものでグラフィカルに閲覧可能になった時代から存在しているものです。
    web2.0をとりまく技術には、Revolutionはありません。
    ビジネスにおいては、
    bancho@sussex さんのコメントにありましたけど
    技術よりもユーザニーズですね。
    ユーザの目に見えてわかりやすい技術のRevolutionが
    ビジネスにおいてもRevolutionといえるでしょう。

  3. yokoken 返信

    > bancho@sussex さん
    音楽とかって、大衆に受けるものを作るのか、自分の作りたいものを作るのか、そのあたりって難しいですよね。
    ちょっと違いますが、画家のゴッホなんて、生前はちっとも売れていなかったみたいですし。どういう考えでもって絵を描いていたのか知りませんが。
    ビジネスという観点で見てしまうと、やはり少なからず利益を上げるものを提供していかなければ、成り立たないとは思います。
    > f さん
    なるほど。ぼくは技術のことはよくわかりませんが、Web2.0って、たしかに寄せ集めというイメージですね。
    特にコレ、というものはなく、それぞれが進化したり、進化したものを組み合わせて新しい枠組みを作ったり、という印象があります。
    技術とユーザーニーズをうまくフィットさせるためには、マーケティングが重要になってくるんだと思います。

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