Agency and Asymmetric Information Considerations

レバレッジ(負債による調達)はよい点(ベネフィット)もあれば悪い点(コスト)もあります。これを、情報の非対称性という観点から見ていきたいと思います。
レバレッジによるエージェンシーコスト(悪い点)
これは大きく分けると2つあり、Overinvestment problem(過剰投資問題、この訳でよいのでしょうか?)と、Underinvestment problem(過少投資問題)に分けられます。これはいずれの場合も、レバレッジにより、ステークホルダー(利害関係者)間で利益相反が発生し、それによりエージェンシーコストが上昇するというストーリーです。この利益相反は、ある投資の結果がエクイティのバリューと、デットのバリューに対して異なる結果を生む場合に起こりえます。この時、マネジメントは自らの利益を追求するかもしれませんし、また、株主価値を重視して、債権者の価値を毀損するような意思決定を行うかもしれません。
まずは、Overinvestment problem から見てみます。次のような状況を考えます。
ある企業Aが、今期末に1000万円のローンを返済しなければならないとします。現在考えているリスクの低い投資(Old strategy)は、価値にして900万円にしかならないと仮定します。ここで、50%の確率で成功、50%の確率で失敗するハイリスクな投資案件(New strategy)があったと仮定します。成功すると1300万円になり、失敗すると300万円にしかならないと仮定します。
Overinvestment.JPG

(画像はクリックすると拡大します)

この場合、株主はこのハイリスクな投資をすることに賛成します。というのは、何もせずに期末を迎えてしまえば株主の価値はもともとゼロだったのですが、この投資を行うことによって期待値が上昇するからです。株主と債権者の間で、明らかに利益相反の関係があることがわかります。これがOverinvestment problemと呼ばれているものです。
次に、Underinvestment problem です。
同じくこの企業Aが、今度はハイリスクな投資を避ける企業だと仮定します。現在の企業価値が900万円で、期末に1000万円のローン返済をしなければならないと仮定します。そこで、この企業Aに、100万円を追加で投資すると、期末に150万円になる投資案件(New project)があったとします。それなりの割り引き率で割り引いたとしても、これはかなり魅力的で、正のNPVを持つ投資になるでしょう。しかし、この企業は現金に乏しく、この100万を調達するためには新たに株式を発行しなければならなかったとしたらどうでしょうか。
Underinvestment.JPG

(画像はクリックすると拡大します)

すると、株主はこの投資に反対するでしょう。新たに100万円分の株式を発行しても、期末に1000万円銀行に持っていかれることは分かっているわけですから、期末には50万円しか残らないことになります。つまり、明らかに正のNPVを持つプロジェクトが目の前にあったとしても、株主価値の向上にはつながらないため、見送るわけです。これも債権者と株主の間で利益相反の関係があり、Underinvestment problem と呼ばれ、リスクの高い負債を抱え、高い成長機会を持つ企業に見られる傾向があるそうです。
そして、このような Underinvestment problem の状況では、株主としては会社の資産を売却して利益を出し、現金配当として持ち逃げしてしまう、という行動に出る可能性があります。
この問題を避けるための一つの方法としては、レバレッジを低下させる、そして負債の満期を短期にすることなどが挙げられています。
レバレッジによるエージェンシーベネフィット(良い点)
高いレバレッジによってエージェンシーコストが上昇する例を見てきましたが、今度はベネフィットです。
ベネフィットを考える前に、Management entrenchment と呼ばれる状況を考えてみます。これは次のような状況です。
マネジメントが自分の個人的な利益を追求すると仮定します。そして、マネジメントの保有する株数は十分少ないと仮定します。すると、マネジメントは株主利益も、債権者利益も軽視し、自己の利益を追求するかと思いますが、株主が権力を行使してマネジメントをクビにすることはかなり稀です。すると、結果的に会社のパフォーマンスは悪化してしまうのですが、これが Management entrenchment と呼ばれるものです。
このような株主利益を追求することへの努力の低下(モラルハザード)や、行き過ぎた無駄遣いはエージェンシーコストの一形態と考えられています。レバレッジを活用する(株式を発行せずにデットで調達する)ことにより、株主の希薄化を防ぎ、マネジメントの利益が株主利益と一致するようにすることで、このようなエージェンシーコストを低下させることができるというものです。
次に、Free cash flow problem と呼ばれる問題を考えてみます。これは、キャッシュフローに余裕が出てくると、利益率が低かったり、無駄とも思えるような投資がしばしば行われるようになる傾向があるという問題です。これらの原因としては、例えば次のようなものが考えられています。

  • Empire building
  • マネジメントは、高収入、高い名誉が得られるので、できるだけ大きな企業を経営することを好みます。そのために、とにかく企業の規模を大きくするように投資をしてしまうというものです。

  • Overconfidence
  • マネジメントは、強気になり、間違いを犯してしまうというものです。

レバレッジのベネフィットの一つに、これらを防ぐことが挙げられます。つまり、将来にわたる金利負担が発生することにより、マネジメントがキャッシュフローの使いみちに慎重になり、無駄な投資を抑制することができるというものです。また、レバレッジによって常にファイナンシャルディストレス(Financial Distress、いまいち日本語がわかりません、、、)に対する意識が高まり、Management entrenchment を防ぐことができるというものです。
さて、最後に少し話が変わりますが、今度は情報の非対称性と資本構造という観点で考えてみたいと思います。
一般的に、マネジメントは、外部の投資家(アウトサイダー)よりも多くの情報を持っていると言われています。その情報の非対称性に関連して、1)レバレッジの、信用に対するシグナルとしての活用性、2)Adverse selection(逆選択)と pecking order theory、について説明します。
まず、マネジメントが企業内のポジティブな情報を外部に伝えるためにはどうすればよいのか、ということを考えます。すると、一つの方法は投資家やアナリストが検証可能な将来に関するステートメントを作成することです。しかし、マネジメントは時としてあまりに具体的な情報を公開することが難しいことがあります。そのような場合に、レバレッジを高めに設定し続けることで、投資家にその企業の成長性および金利支払に対する安全性に関するメッセージを送ることができるというものです。
例えば、ある企業の1年後の価値が、等しい確率で100万円か、50万円のどちらかだと言われている状況を考えます。この企業が、25万円のデットファイナンスを行っている場合と、55万円のデットファイナンスを行っている場合で、どのようなことが読み取れるでしょうか。
もし、マネジメントが25万円のデットファイナンスを選択していた場合、これは信用に対する有効なシグナルとはなりません。なぜならば、どちらの結果(100万円 or 50万円)になったとしても、25万円は確実に返済可能だからです。つまり、50万円以下のデットファイナンスであれば、有効なシグナルとはみなされません。
一方、55万円のデットファイナンスは信用力を示すシグナルとみなされるかもしれません。つまり、もしマネジメントが結果に対して何らポジティブな情報を持っていないのであれば、それなりの確率で倒産してしまうわけですから、55万円のデットファイナンスは行わないはずである、ということになります。
このように、レバレッジに関する情報から、信用に対するシグナルとして外部からでも読み取ることが可能であるという話です。
最後に、Adverse selectionPecking order theory についてです。
Adverse selection を説明するためには、まず lemons principle を説明します。これは、レモンと言っても、英語では欠陥車(中古車)のことを意味するようです。中古車市場で売り手のみがより多くの情報を持っている場合に、買い手としては情報が少ないことから本当によい品質のものと、悪い品質のものの区別がつかないため、値引きを要求するようになり、その結果、市場には品質の悪いもののみが残ってしまう(逆選択、Adverse selection)という現象のことを指しています。「悪貨は良貨を駆逐する」という話だと思われます。最近、賞味期限等がいろいろ問題になっていますが、消費者サイドが品質を判別する目を持っていなければ、市場に出回る商品のクオリティは下がってしまうのかもしれません(この問題は、他の観点も重要だと思うので、少しずれるかもしれませんが。賞味期限切れと味は必ずしも関連がないかもしれません)。
さて、この話を企業の資金調達にあてはめたのが pecking order theory と呼ばれるものです。これは、企業は一般的に資金調達の方法として、内部留保、デットファイナンス、エクイティファイナンスの順に好む、という話です。内部留保が最も安い調達方法であり、外部からの調達としては、デットの方がエクイティよりも安く、最も高いエクイティは最後の手段というわけです。投資家からすると、内部の情報はわからないため、それなりのプレミアムをつけてくれないとエクイティファイナンスには応じないため、企業としては結果的に高コストになってしまう、という話です。
日本語が変なところもありますが、とりあえず、こんなところで。明日はいよいよ試験です。

2 件のコメント

  1. 投資一族の長 返信

    とりあえず試験がんばれ~♪
    すごいね。これ。このままレポートになるじゃない。きちんと書き留めておくところがえらい。
    確かに単語でなく、文章が多少直訳的な感じがする箇所もあるけど、専門書でも似たようなレベルでしょう。
    ステークホルダーの利益相反において、株主は明確に経営に対し株主総会で反対票を投じることが出来る権利を持っているが、債権者に関してはあるのでしょうか?
    見えない権利だと思っているのでハイレバレッジな会社への株式投資はついつい敬遠しがち。電力とか。
    関係ないけどyahooで見るところの有力負債ランキング。
    俺が思っている勢力図から変わってるよ。
    http://profile.yahoo.co.jp/ranking/loan2/1.html
    Free cash flow problemは俺には死活問題だね。
    キャッシュフローが突然マイナスになったと思ったら、B/Sの建物に大量の減価償却が…。おいおい、随分立派な本社ビル建ててるみたいじゃないの、みたいな会社あったな。
    去年MBOされたけど、創業者社長の葬式に大量に使い込んでる会社もあった。

  2. yokoken 返信

    ありがとう。とりあえず、試験は終わりました。試験の話はまた後ほど。
    ブログって書いておくと後で検索したりしてすぐにアクセスできるから便利なのです。ということで、まとめがてら書き残してみました。
    「ステークホルダーの利益相反において、株主は明確に経営に対し株主総会で反対票を投じることが出来る権利を持っているが、債権者に関してはあるのでしょうか?」
    どうなんでしょう?おそらく債券保有者はないんではないでしょうか。一方、銀行、特にメインバンク、なんかはかなりの情報を持っていて、それなりに深いところまで関与してくる可能性はあるでしょうね。それが日本の従来の金融システムだったわけですし。
    教えてもらった有利子負債ランキングだけど、消費者金融、電気機器(家電メーカー)、不動産あたりって、意外と低いんだね。
    昔からキャッシュフロー好きだよね。ぼくも好きなほうだけど。あまりに立派な本社ビルを建てている会社はあまりよろしくないですね。

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