決断力 (角川oneテーマ21)
羽生 善治
つい先日16連覇を達成されたばかりの羽生王座の本を読んでみました。
本の構成として、将棋での経験をベースにしつつも、各トピックの最後では必ずビジネスや他への一般的な応用を述べられています。こういった、ある世界で頂点に登りつめた方の本では必ずしも自分の言葉でビジネスへの応用を述べなくてもよいのではないかと思ってしまいますが、そのあたりは編集者からの要請があったのでしょうか。それはともかく、プロとしての心構えといった意味では、十分ビジネスパーソンにも適用されるべき考え方がかなり含まれていると感じました。
勝負は相手が嫌がることをやるものなのだ。 P.17
勝負の世界ですね。
流れをつくるよりも、サーフィンのように流れにのっていく。波はつくれないが、乗れるかどうかだ。
しかし、波は幾度か変わる。つまり、お互いに何度かの勝機があるということだ。これを掴めるかどうかが実力というものだろう。 P.21
常にチャンスがあるわけではなく必ずガマンの時期があるということでしょうか。そのガマンの時期の過ごし方によって、勝負をものにできるかどうかが決まるんだと思います。プロとしていかに過ごすか。
七冠をとったあと、米長先生から、釣った鯛をたとえに、
「じっと見ていてもすぐには何も変わりません。しかし、間違いなく腐ります。どうしてか?時の経過が状況を変えてしまうからです。だから今は最善だけど、それは今の時点であって、今はすでに過去なのです」
と戒められた言葉は、今も胸に深く刻まれている。 P.43
人間、常に変わり続けなければ進歩できないということでしょうか。
リスクを避けていては、その対戦に勝ったとしてもいい将棋は残すことはできない。次のステップにもならない。それこそ、私にとっては大いなるリスクである。いい結果は生まれない。私は、積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にすると、いつも自分に言い聞かせている。 P.72
投資の話だと、「投資をしないことが最大のリスクである」といった話を聞いたことがあります。
ミスには面白い法則がある。たとえば、最初に相手がミスをする。そして次に自分がミスをする。ミスとミスで帳消しになるかと思いがちだが、あとからしたミスのほうが罪が重い。そのときの自分のミスは、相手のミスを足した分も加わって大きくなるのだ。 P.99
この本の中で、プロの将棋の世界では何かすごい手を出すというよりも、いかにミスをしないかが重要である、といったことを述べられています。相手がミスした時に、油断してこちらもミスしてしまった場合などには後からミスした自分の方が立場が悪くなるということですね。なるほど。