上場REITが破綻! ニューシティレジデンス投資法人

毎日、ほんとにいろいろなことが起きていますが、今度は何と、日本で上場REIT(Real Estate Investment Trusts)の一つである、ニューシティレジデンス投資法人が破綻しました。
いやぁ、これには本当に驚きました。普通の企業ではなく、REITですよ、REIT。
まずは破綻のニュースから。

ニューシティレジデンス投資法人が民再法申請、負債総額1123億円
[東京 9日 ロイター] ニューシティ・レジデンス投資法人8965.Tは9日、東京地方裁判所に民事再生法手続き開始の申し立てを行い、受理されたと発表した。負債総額は1123億円。
 米国に端を発した信用収縮の影響で日本の不動産市況も打撃を受け、取得する予定だった資産の決済資金や借入金の返済を調達できなくなった。今年に入り、不動産関連企業の経営破たんが相次いでいることを背景に新規融資や借入金の借り換えが難しくなったほか、保有している資産の売却もうまく行かず、今月返済の期限を迎える借入金の調達のめどが立たなくなった。
 東京商工リサーチによると、9月の全国倒産件数(負債総額1000万円以上)を業種別にみると、建設業が401件(前年同月比41.1%増)、不動産業が47件(同30.5%増)となり、建設、不動産企業の経営悪化が目立つ。
 ニューシティは、2004年12月に東京証券取引所に上場した不動産投資信託(J─REIT)で、08年2月期は24億5300万円の当期利益を計上していた。時価総額は8日終値ベースで約129億円。
 9日のニューシティ・レジデンス投資法人の終値は前営業日比1万円安の7万1000円だった。
(ロイターニュース 江本 恵美記者)

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-34217220081009
REITがやっていることも、ぼくらのような個人の不動産投資家がやっていることも、基本的にはまったく同じです。自己資金をある程度出して、ローンを引っぱってきて、物件を購入。賃料収入から金利(および元本)返済にあてていき、手元にキャッシュフローが残れば、それが利益(もちろん各種税金は支払いますが)、ということだと思います。
ただ、REITと個人投資家で大きく違うのは次の2点でしょうか(いや、他にもいっぱいあるとは思いますが)。

  1. REITの場合は、導管体性を満たすために、手元に資金を残すことができず、ある決算期に発生したキャッシュはほとんどすべて投資家に分配しなければならないようになっています。
  2. REITの場合、ローンは短期借り入れが多く、保有物件の時価評価によってリファイナンスが難しくなることがあると思われます。一方、個人投資家の場合は20年とか30年とかの長期の借り入れで行うことが多いでしょうから、返済さえきちんと行っていれば、突然の大きな条件変更はほとんどないと思われます。

REITはこういった経営を強いられているわけですから、不動産市場の影響を非常に受けやすく、脆弱な財務基盤を持っていると言えるかもしれません。個人で不動産投資をする場合、賃料市場の影響は受けやすいが、物件自体の評価額の影響は限定的です。さらに会社員とかであれば、給与収入もありますし。
「個人のファイナンシャルプランを考えるときに、どんな時も生活の3~6ヶ月程度分は現預金で持ちましょう」という話があったり、「企業経営の資金繰りで手元流動性を確保しましょう」という話があったり、はたまた「松下幸之助さんのダム経営」の話なんかは、すべて同じ考え方に基づくもでしょう。
短期的には、一見無駄に見えるものであっても、長期的に安定させるためには、「備えあれば憂いなし」ということでしょうか。
さて、話を元に戻しますが、サブプライム関連(証券化商品)で格付け機関の信頼性が疑問視されていましたが、今回も格付け会社の格付けはきちんと機能するのか?という気がしてなりません。

ニューシティ・レジデンス投資法人<8965.T>の格付けをBa1に4ノッチ引き下げ=ムーディーズ
[東京 10日 ロイター] ムーディーズ・インベスターズ・サービスは10日、ニューシティ・レジデンス投資法人8965.T<0#8965=JFI>の発行体格付け・無担保長期債務格付けをA3からBa1に4ノッチ引き下げた上で、さらに引き下げ方向で見直すと発表した。
 ムーディーズによると、今回の格下げは、10月9日にニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生手続開始の申立てを行ったことに伴う措置。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK019628020081010?feedType=RSS&feedName=marketsNews&rpc=155

ニューシティ・レジデンス<8965.T>の投資法人債格付けをA+からCCCに引き下げ=R&I
[東京 9日 ロイター] 格付投資情報センター(R&I)は9日、ニューシティ・
レジデンス8965.T<0#8965=JFI>の投資法人債格付けをA+からCCCに引き下げた。

http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPnTK017710520081009?feedType=RSS&feedName=companyNews
破綻直前まで、ムーディーズはA3、R&IはA+を付与していたようです。もちろん格付け推移行列なんかを見れば、過去でA3やA+あたりでも破綻する事例はあるとは思うのですが、そもそもそういうことが起きていたという事実が、格付け機関の能力の限界を示しているものだと思います。
今回のニューシティレジデンス投資法人の場合、主要株主がシービー・リチャード・エリス・インベスターズ・ホールディングス株式会社や株式会社ニューシティコーポレーションといったスポンサーであったために、個人投資家への影響は限定的だったと思われますが、個人が多数を占めていたら、大変なことになっていたのではないでしょうか。
日本のREIT市場はまだまだ未成熟なんですかね。
ちなみに、平成20年9月26日に以下のようなプレスリリースがあったのですが、
資金の借入れ(金利決定)に関するお知らせ
短期借り入れではあるものの、金利は約1.5%なんですね。安いなぁ、と思いました。
それにしても、今回の破綻には驚きました。
ぼくがやっている不動産投資の現状だと、破綻なんか起きる気がしないのですが。
やはり、DCR(Debt Coverage Ratio)は大切です。

2 件のコメント

  1. 匿名 返信

    数年前までDSCRというのがフツーだったと思うんですが今はDCRの方が通りがいいみたいですね。
    表題のニューシティレジデンスについては、リファイナンスの不首尾が経営破綻の直接的な原因なんでしょうが、不動産業界が活況であったなら増資で難なく切り抜けていただろうし、そもそも銀行の資金引き上げなんて考える必要もなかったわけで。
    リチャードエリスがついていながら何やってんのという気もしますが…

  2. yokoken 返信

    コメントありがとうございます。
    表記によってはDSCRというのを見ることもありますし、意味がわかれば何でもよいのだと思います(ぼくは不動産業界で働いているわけではありませんので、どちらの表現が標準か、とかはわかりません)。
    株式投資なんかでも、PERと書いたり、P/Eと表記したり、いろいろありますし。
    もちろん市況によってはこのような事態にはならなかったと思いますが、不動産投信を上場させて幅広い投資家にアクセス可能にしているわけですから、銀行の方も、そんな簡単に融資を引き上げないでほしいと思います。
    REITに対するマイナスのイメージができてしまったことは間違いないでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です