巨人・渋沢栄一の「富を築く100の教え」 (講談社BIZ)
渋澤 健
正直、渋沢栄一さんって、あまり知らなかった、というか正確には日本史で勉強したはずなのでほとんど覚えていなかったのですが、すごい方ですね。この方の考え方もやはり論語がベースになっています。
この本は、基本的に渋沢栄一さんの言葉に対して、著者である渋澤 健さん(渋沢栄一さんの孫の孫にあたる方)が解説する形になっています。以下で「」付きの部分はすべて渋沢栄一さんの言葉です。
明治から大正という「日本資本主義の成長の時代」に、彼は「論語と算盤の一致」というスローガンを掲げて行動しました。『論語』に象徴される道徳と、お金を儲ける経済という、一見かけ離れた二つを融合させること。それが日本国の発展、そして築いた富を永続させるために不可欠である-という信念を持っていたのです。 P.11
論語と算盤、そのバランスが大切であっても、どちらか一方だけではなかなかよい結果にはつながらないんだと思います。
「世の中の事はすべて心の持ちよう一つでどうにでもなる。」
ある出来事にぶつかったとき、それがあなたにとって、いいことなのか、悪いことなのか。楽しいものなのか、つまらないものなのか。それを決めるのは、実はあなた自身です。あなたの心の持ち方で、目線は変わってくるものです。 P.42
この考え方は、今までもいろいろな本に載ってました。人類に共通する不変の法則なんでしょうね。
「あまりに堅苦しく物事に拘泥し、細事に没頭する時は、自然に溌剌たる気力をしょうまし、進取の勇気を挫くことになる(中略)。溌剌たる活動をなし、初めて大事業を完成し得るものであるから、近来の傾向については、大いに警戒せねばならぬ。」
細かいことばかりにこだわると、法律やら規定やらが際限なく関わってきて、「その法律を踏み外すまい、その規定内に収めなければ…」ということが、目的のようになってしまいます。
インサイダー取引などの不正は、もちろん、きちんと追及しなければなりません。ただ、それを追求することばかりが社会正義になれば、善良な市民たちは、大胆な行動が取りにくくなって、その結果、日本は世界を相手にした競争を、乗り越えて、勝ち抜くことが難しくなってしまうでしょう。 P.54
イギリスに来てから非常に感じたことは、日本人は生真面目過ぎるのかなぁ、ということです。もちろん、真面目で、ルールを守ることは大切なことだと思うのですが、ルールを守ること自体が目的化してしまって、本質を見失ってしまうことがたびたびあるのではないかと。そのあたりのバランス感覚が重要なんだと思います。
一方、守ろうとする人を育成するために、道徳教育も重要だと思います。学校で教科書を読むとかではなく、人としてなすべき当たり前のことを当たり前のように、まわりの大人たちが自然と教えていくのが理想だとは思いますが、やさしいことではないのかもしれません。
「ただ悪い事をせぬというのみにては、世にありて、何も効能もない。」 P.58
パタゴニアのイヴォン・シュイナードさんと同じことをおっしゃってますね。
「東洋、特に日本では、陰徳をもって行いの上なるものとし、自分の責任はもちろん、他人の責任までも、これを負うをもって、武士道の粋としている。」
欧米に比べて日本では、寄付文化が根付いていません。これも、「武士道の伝統がある日本では、陰でよいことをする“陰徳”が尊ばれるから」と言われることがありますが、実は武士道や陰徳を口実に、正しいことを何もしない怠慢の言い訳をしているとしか思えません。
(中略)
正しいと信じたことは、何があっても、勇気を持って行う。そこに「武士道の本当の美しさ」があるはずです。陰ながらであろうが、表立ってであろうが、よい行いは、なされるほうがいいに決まっています。もう“陰徳”を言い訳にするのはやめて、「正しい行い」に時間とエネルギーを使いましょう。 P.80
表立とうと、陰でやろうと、まずは実行することが大切だと思います。実行しなかったら、何も結果に結びつきませんからね。
「もしそれ富豪も貧民も王道をもって立ち、王道はすなわち人間行為の定規であるという考をもって世に処すならば、百の法文、千の規則あるよりも遥かに勝った事と思う。」
王道。大仰な言葉ですが、平たく言えば、「人が胸を張って進むべき道」のことです。「法律や社会的規範とは別に、人が自ら律するルール」とも言えます。
(中略)
もちろん、法律は必要です。でも、何でも法律だけを基準に考え、「法律で禁じられていないから、やってもいい」などと、すべてをその判断に委ねるのは、いかがなものでしょうか。
それよりも、すべての人が心に“王道”を持つべきです。その王道に従って行動するのは、ある意味で、法律を守ることよりも尊いのです。 P.190
何かの判断に迷ったとき、人として胸を張って他の人に説明できるかどうか、そういった指針に従っていれば、大きく間違うことはないんでしょうね。
「富の分配平均などとは思いも寄らぬ発想である。要するに富むものがあるから貧者が出るというような論旨の下に、世人がこぞって富者をはいざいするならば、いかにして富国強兵に実を挙ぐることが出来ようぞ。」
ましてや、「富を平等に分配し、貧しい者をなくそう」などと考えるのは、あまりに非現実的なですし、それでは人は、何を目標に、仕事に励めばいいのでしょうか。
弱者、敗者に全体の水準を合わせる社会よりも、彼らが強者、勝者になれるように応援する社会。そんな世の中のほうが、健全で明るく、向上心に富んでいます。 P.192
イギリスで起きたように、あまりに弱者に対する保護を手厚くすれば、人は労働意欲を失ってしまいます。やはり、サポートすることで、働く意欲持てるようにする方向の政策を採るべきなんだと思います。格差が広がったからといって、単純に金銭的な援助をすればいい、という話ではないですよね。
「金はそれ自身に善悪を判別するの力はない、善人がこれを持てば善くなる、悪人がこれを持てば悪くなる。」 P.238
できるだけ有意義なお金の使い方をしていけるといいですね。
渋沢栄一さんについてもっと学ばねば、と思いました。