ちょっと前に、「VCICを通じて学んだこと」と題して書きましたが、今回はMBAとの関係などを中心に書いてみたいと思います。
VCICではビジネスプランを評価するわけですが、そのビジネスを理解する上で、MBAの授業で学んだことがいくつか役に立ちました。例えば、Web2.0。5つのビジネスプランのうち、2つはWeb2.0がらみのビジネスであり、ロングテールがどうしたとか、その手の話が出てきました。2つ目の例としては、バランス・スコアカード(Balanced Scorecard, BSC)です。これもマネジメントアカウンティングの授業でやるまでは、ぼくは知りませんでした。あるビジネスプランでは、意思決定に役立てるパッケージソフトウェアを開発、販売する会社だったのですが、プランには明確にバランス・スコアカードとは記載されていなかったのですが、「戦略マップを作って、、、」という話から、だいたいどんな内容なのかすぐに想像することができました。
ビジネスのボキャブラリーとして基本的な意味くらいは知っておかないと、これらのビジネスモデルを理解する上で難しかったと思います(もちろん理解できていなかったこと多々ありましたが)。
また、バリュエーションの話にもどってしまいますが、バイオテクノロジー関連の企業の場合、リアルオプション(コーポレートファイナンスの授業でさわりだけやりました)を使う場合もあるようです。事前に情報を集めているときに、リアルオプションでバイオテク企業を評価している文献をいくつか目にしました。しかし、結局、仮にモデルを準備したところ、計量化するのが非常に難しいだろうからComparableでよいのではないか、という方向で落ち着き、特に深くは準備しませんでした。
それから、全く別の面としては、カルチャー的な部分で学ぶこともありました。昨年末くらいから徐々に準備を始め、3月頭までずっと同じチームで活動してきましたが、途中かなり衝突することもありました。チームはイギリス人2名、インド人2名、とぼくだったのですが、まずは時間に関してです。インド人の二人は時間をなかなか守らない傾向が強かったです。ある時、面と向かって時間に関して聞いてみたところ、「インドでは17時といったら、17時から17時半くらいのことを指すから、その間に来ていれば誰も文句を言ったりはしないものだ」ということでした。これを聞いたときは、さすがに時間のことをあまり言ってもしょうがないかな、と思うようになりました。
あとは作業の分担でしょうか。事前にいろいろなテンプレート(ワードドキュメントやエクセルシートなど)を用意しておこう、という話を当初から言っていたのですが、いつになっても各自の用意しているものをシェアしようとしていませんでした。ある時、「いつになったら君が用意した部分を見せてくれるんだ?」みたいなことを言ったところ、「これはオレの担当だ」と。そして、別の人が「おまえは彼を信頼できないのか?」と。ぼくとしては各自のアウトプットを事前にシェアして、意見交換してよりよいものを準備しようという意図だったのですが、あまりそのような発想はなかったようです。
(上の話はちょっと簡略化して書いているので、若干誤解を生じかねませんが、ここで言っているのはどちらが良いとか悪いとかいう話ではなく、考え方が全く違うんだなぁ、ということです。)
これらのことを認識したときは、ぼくだけが別の考え方で今まで動いていたのか、とかなり驚いた瞬間でした。そんな発想で作業しているとは夢にも思っていませんでした。ジョブディスクリプションというものなんだと思います。
例えば以下の記事に似たような話が載っています。
第20回「トヨタ比較で浮かぶ米ビッグスリーの弱点」の数式(2007/03/07)
それから昨日、このVCICのメンバーで久しぶりにお昼を食べたのですが、その際に各自が感じた良かった点、もっと改善できた点をシェアしよう、という話になりました。ぼくは当たりさわりのないことを言うにとどめてしまったのですが、後であるインド人に、
「お前にとって、ダイレクトに思っていることをぶつけるのは非常にタフかもしれないけど、あのような場では言わないとダメだ」
「そういうことが言えないと、この国(イギリス)では生き残っていけないぞ」
と言われてしまいました。きちんとこういうことを指摘してくれるメンバーと一緒に働くことができてよかったと思っています。腹を割って話ができる人が何人いるか、重要ですね、ほんとに。
忙しいときに限って、書きたいことが出てくるのは、マーフィーの法則でしょうか、、、
「カルチャーの違い」実感してます。役所や企業に問い合わせをしても、担当者不在で返事が出なかったりしますよね。仕事を肩代わりするのはその人の仕事を奪うから良くない、と言われても、そこに第三者(顧客)が絡んでくると、単にサービスの悪さとしか思えない・・・。個人主義の社会では不満に思わない事も、日本人にとってはかなりネガティブな印象を受けますよね。
外資系企業だとジョブディスクリプションも当たり前ですが、日本では形骸化してるところも多いですし・・・。そんな個人主義じゃ、日本の企業では仕事が進まないし、結果、会社の評価(取引先や顧客から見た)も低下しますからね。良くも悪くも、日本の従業員はまだまだ共同体主義と終身雇用制の感覚が残っていて、たとえ平社員でも、会社全体の発展を気にする視点を持っている気がします。欧米企業では転職も多く、四半期毎といった短期間での評価も当たり前ですから、会社の将来性より、今現在の自分の業績を気にしてれば良くなってしまうわけで。そういう社会では、日本の高度成長期みたいな急速な発展は望めないでしょうね。まあ、個人間の食い合い競争に打ち勝つ力は出てきそうですが。その辺が、「思ってる事をダイレクトにぶつける」文化にもつながってるような気もします。
それにしても、はっきり言ってくれるメンバーは本当に貴重ですね。
なんか長くなってしまってすみません・・・
何でもかんでも自分の意見を言えばいいのではなく、結局はTPOをわきまえて発言しようということでは?相手の発言に自分なりの意見を持つことは大前提として、それをどのタイミング、どの言葉で言うか(時には言わない)ということが、自分の発言の価値を高める上で非常に重要だと思います。
どこにでも、グループワークのなかで空気を読まず、全て自分の意見をゴリ押ししようとする人いない?個人的には中国人とインド人に多いような気がします。うちの学校だけかもしれませんが。
> bancho@sussex さん
ちょっと話がそれますがサービスが悪いという意味では、銀行の口座開設など人によって判断基準が違ったりするみたいですね。勘弁してほしいですね。
日本人は会社のために、グループのために、という発想があると思いますが、(漠然とした表現ですが)外国人は、あまりそういう発想がない気がします。自分の都合しか考えていないような。日本人としてはかなりフラストレーションがたまるところです。
貴重なコメントありがとうございました。
> まっちゃんさん
こちらに来て、嫌というほど機会があるのですが、相手を面と向かって評価するということがぼくはかなり苦手です。相手のよい点、悪い点などをグループ内で発表したり、逆に評価されたり、自分の目標をみんなの前で発表したり。相手の悪い点をみんなの前で明確に指摘するという行為が苦手で、結局はあたりさわりのないことを言ってしまったわけです。
空気を読まずに自分の意見を通す人は結構います。この点に関しては、ぼくはそれほど国籍に依存するという気はしませんが。