たまたま以下のような記事を見かけました。「世界人口の1%、富の4割占有」「世界の「富」、人口の2%が半分以上所有」だそうです。
2006/12/05-22:19 世界人口の1%、富の4割占有=個人資産平均は日本首位−国連大学
世界人口の1%が個人総資産の4割、2%が半分以上を所有する一方、全体の半分の貧困層は総資産の1%しか持っていない−。国連大学世界経済開発研究所(ヘルシンキ)は5日、世界の個人資産に関する研究結果を発表した。調査では、日米独などの最富裕層が世界の富を独占、国際社会に激しい格差があることが改めて浮き彫りとなった。
それによると、2000年の世界の個人資産は125兆ドル(1京4375兆円)で、世界の国内総生産(GDP)の合計値の約3倍。生活費の格差を調整して算出した世界平均は、1人当たり2万6000ドルだが、日本は18万1000ドル、米国も14万4000ドルでずばぬけて高く、インドの1000ドルなどと大きな格差があった。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2006120501084
この富って何を意味するのでしょう?会社で言うところの「総資産(負債を含んだ額)」に相当するのか、「純資産(=総資産 – 負債額)」に相当するのか、よくわからないなぁ、と思っていたら以下のような別の記事を見つけました。もう少し詳しく書いてあります。
世界の「富」、人口の2%が半分以上所有
国連の研究機関が5日発表した調査で、世界の成人人口の2%が家計全体の「富」の半分以上を所有していることが分かった。地球規模で豊かさに偏りがある実態が浮き彫りになったが、日本は世界平均や米国などと比べて格差が小さかった。
調査は国連大学世界開発経済研究所(本部・ヘルシンキ)が国際機関や各国の統計(2000年)を使ってまとめた。預貯金や不動産などの資産から負債を引いたものを「富」と定義した。
調査によると世界の家計の富は計125兆ドルで、国内総生産(GDP)の合計の約3倍となった。家計レベルで世界の富の分配状況を示したのは今回が初めてという。
最も豊かな層に属し、成人人口の1%に相当する人々が所有する富は、世界の4割に相当。「上位1%」を居住している国別に分類すると、米国が最多の37%、日本は2番目に多い27%となった。日米だけで上位1%の3分の2近くを占めた。(ニューヨーク=中前博之) (01:35)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061205AT1C0500205122006.html
「預貯金や不動産などの資産から負債を引いたものを「富」と定義」とあるので、「純資産」に相当する部分みたいですね。詳細はよくわかりませんが、これって、パレートの法則をはるかに超えるレベルのような気がします(「パレートの法則」という言葉の使い方が適切かどうかはとりあえずおいておきましょう)。
日本の平均は18万1000ドルとありますので、今の為替レート(1ドル = 115円)で換算すると、約2100万円!え?そんなに持ってないよ、って思われる人が多いかと思います(そうでない人もいらっしゃるかもしれませんが、、、そういう方は今度おごってください)。つまり、ぼくたちが感じる実感と合わないわけです。
この原因はやはり平均を取っているからなんでしょうね。つまり、統計でいうところの中央値(メディアン)を見てみたら、おそらく5分の1(約400万円)から、10分の1(約200万円)くらには下がるのではないでしょうか。このくらいが感覚に合うのだと思います。ぼくの勝手なイメージですが。
これを簡単な例で説明してみます。例えば10人の人がいるとします。初めの人が1億円の(純)資産を持っていたとします(お金持ち!)そして、他の9人の人はそれぞれ1万円しかなかったとしましょう。この場合、平均は
(1億円+9万円) / 10 = 約1000万円
となります。1万円しか持っていない9人からしてみれば、「え?平均1000万円?そんな持ってないよ、、、」となるわけです。しかし、中央値(メディアン)で測ってみたら、下から数えて5人目と6人目の平均である1万円となりますから、「ああ、ぼくらは平均なんだな」という具合になります。
こういった格差については、資産ではありませんが、所得についてのジニ係数を使った調査が有名だと思います。そういえば、こんなところにも書いてました。
今回言いたかったのは、「日本の個人はお金持ち。だけど大部分の人にとって今回の調査結果はイメージに合わないはず。それは統計の問題。統計値を見るときは注意しましょう」といった感じでしょうか。
管理会計の勉強してると10分も経たずに眠くなってきます、、、ちょっと現実逃避したら長くなってしまいました。試験勉強!
(2006/12/07 追記)
ファイナンシャルタイムズにさらに詳しく載っていたので引用しておきます。
Richest 2% hold half the world’s assets
By Chris Giles, Economics Editor in London
Published: December 5 2006 13:13 | Last updated: December 5 2006 13:13
Personal wealth is distributed so unevenly across the world that the richest two per cent of adults own more than 50 per cent of the world’s assets while the poorest half hold only 1 per cent of wealth.
A survey released on Tuesday shows that middle-income countries with high growth rates still have a long way to go before they have a hope of catching up with the levels of prosperity of the richest.
Adults with more than $2,200 of assets were in the top half of the global wealth league table, while those with more than $61,000 were in the top 10 per cent, according to the data from the World Institute fpr Development Economics Research of the United Nations University (UNU-Wider).
To belong to the top 1 per cent of the world’s wealthiest adults you would need more than $500,000, something that 37m adults have achieved.
So much of the world’s wealth is concentrated in few hands that if all the world’s wealth was distributed evenly, each person would have $20,500 of assets to use.
Almost 90 per cent of the world’s wealth is held in North America, Europe and high-income Asian and Pacific countries, such as Japan and Australia.
While North America has 6 per cent of the world’s adult population, it accounts for 34 per cent of household wealth.
The concentration of wealth in different countries varies considerably, with the top 10 per cent in the US holding 70 per cent of the country’s wealth, compared with 61 per cent in France, 56 per cent in the UK, 44 per cent in Germany and 39 per cent in Japan.
According to Anthony Shorrocks, the director of UNU-Wider, the number of wealthy individuals in a country depends on the size of the population, the average wealth and its inequality.
“China fails to feature strongly among the super-rich because average wealth is modest and wealth is evenly spread by international standards”, he said.
As countries grow richer, their population changes how it holds wealth, according to the report.
In developing countries, property, particularly land and farm assets are important, while cash savings tend to dominate in middle-income counties.
Only in certain advanced countries such as the US and the UK with developed financial sectors is there a strong appetite for holding equities and other more sophisticated financial assets.
Debt is also low in poor countries because financial institutions do not exist to allow people to borrow.
In contrast, the authors say “many people in high-income countries have negative net worth and, somewhat paradoxically, are among the poorest people in the world in terms of household wealth.”
Wealth is difficult to measure even in the most advanced countries, so the research was based on painstaking compilation of aggregate and survey data for the 38 countries of the world where it exists and statistical models for the rest of the world.
Copyright The Financial Times Limited 2006
http://www.ft.com/cms/s/41470ec0-845b-11db-87e0-0000779e2340.html