所得控除のメリットがないにもかかわらず専業主婦が確定拠出年金に入るべき理由

確定拠出年金法が改正され、2017年1月からは、基本的に20歳から60歳の方は全員が確定拠出年金を利用できるようになります。

今回、国民年金の第3号被保険者(いわゆる専業主婦)の方も加入できるようになるわけですが、「専業主婦は所得控除のメリットがないから、確定拠出年金は意味がない」といったことをおっしゃっている方がいらっしゃいます。果たして、本当に意味がないのでしょうか。それを具体的な数字で確認してみたいと思います。

(そもそも確定拠出年金って?という方は、例えば以下のリンクなどをご覧頂ければと思います。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000127172.pdf

http://www.toushin.or.jp/dc/labo/

 

では、実際に40歳で専業主婦の方がこれから個人型確定拠出年金に加入する場合を考えてみます。

40歳から60歳まで20年間、毎月23,000円を拠出し、平均リターンが4%で運用できたと仮定します(株式の投資信託を活用すれば、4%というのは十分現実的な数字だと思います)。

すると、総拠出額(積立額)は、23,000円✕12ヶ月✕20年 = 552万円となりますが、4%で運用できたとすると60歳時の評価額は846万円(ここでは簡単のため千円以下は切り捨て)となり、

846万円 – 552万円 = 294万円

が運用益(キャピタルゲイン)となります。一般的な証券口座や銀行口座で投資信託を積み立てた場合、売却するとこれに対して約20%の譲渡所得税が課税されますから、294万円✕20%=58.8万円の税金を支払う必要がありますが、確定拠出年金口座ではこれが非課税となります。

 

とは言うものの、一時金もしくは有期年金の形で確定拠出年金を受給する場合であっても、無条件で税金がかからないわけではありません。例えば、846万円全額を60歳になった時に一時金で受け取る場合を考えてみます。

この場合、税務上、846万円は退職所得という扱いになるのですが、これには退職所得控除という所得控除が適用されます。加入期間20年間で計算すると、40万円✕20年=800万円が退職所得控除額になりますので、退職所得としては、(846万円-800万円)/2 = 23万円となります。

退職所得は源泉分離課税ですので、以下の速算表を参考にすると、

https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2732_besshi.htm

この23万円という退職所得の場合、税額は、23万円✕5%✕102.1%=11,741円となります。つまり、一般的な口座で運用した場合は58.8万円の課税になっていたところが、1万円ちょっとの課税ですむわけです。なんという節税!

ただし、これはいい話ばかりではありません。確定拠出年金口座を開設する場合、開設時および開設後の管理に対して費用が発生します。

この費用は金融機関によって異なるのですが、例えば以下の

http://www.dcnenkin.jp/search/commission.php

個人型確定拠出年金ナビを参考にもっとも手数料が安い場合で考えると、加入時には3000円程度、加入中は毎月167円ということですから、20年間加入する場合は、

3,000円+167円✕12ヶ月✕20年=43,080円

ほどの手数料を支払うことになります。ということでいくらおトクになるかというと、

おトク額

= (普通の証券/銀行口座で運用した場合に課税される税金) – (確定拠出年金口座で運用した場合に課税される税金) – (確定拠出年金口座で運用するために発生する費用)

= 588,787円 – 11,741円 – 43,080円

= 533,865円

つまり、59万円近くの税金上のメリットを享受するために、4万円ちょっとの手数料を払うことになりますが、それでも総合的に考えて53万円以上はおトクになることになります。

 

所得控除のメリットを享受できない専業主婦の方であっても、これだけおトクになるということであれば、加入するメリットは十分にあるのではないかと個人的には思います(もちろん、うちの奥さんにも、来年から加入してもらう予定です)。

 

最後に加入時年齢が、20歳、30歳、40歳、50歳の4パターンのそれぞれの場合で比較してみましたので、表として掲載しておきます(クリックして拡大してご覧頂ければと思います)。

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20歳から加入した場合のおトク額はナント約300万円!となります。

ということで、所得控除のメリットがない、いわゆる専業主婦の方が確定拠出年金に加入するべきかどうか、ということを経済合理性の面だけから考えて比較してみましたが、結論としては加入するべき、ということになるかと思います。

最後に4点ほど念頭に置いておくべきことを書いておきます。

  1. ここでは運用による期待リターンを4%と仮定しましたが、アセットアロケーションによってはこれよりも高かったり、低かったりしますので、各個人の運用によっておトク額は変わります(しつこいですが、4%という数字は、グローバルに分散された株式のインデックスファンドで運用していれば十分現実的な数字だと個人的には考えています)。
  2. 60歳時点で全額一時金として受給するという前提で計算していますが、実際には一時金と年金の組み合わせで受給することにより、確定拠出年金にかかる税金はゼロにすることも十分可能かと思います(退職所得控除に加えて、公的年金等控除の併用)。
  3. 今後の制度変更、税制変更により、今回のシミュレーション結果は変更になる可能性があります。あまり現実的とは思いませんが特別法人税の凍結が解除されてしまうと、期待リターンは1%以上低下することになるかと思います。一方、拠出限度額が引き上げられたりすると、お得額はさらに大きくなることになります。
  4. 加入期間が長い方がおトク額は大きくなりますので、上記の例でもわかるように、50歳くらいの方は加入の手間を考えると、必ずしも利用すべきということにはならないかもしれません(ただし、60歳以降も運用指図者として運用はできますので、そこまで考慮するとやはりおトクかとは思います)。

 

多くの人は、老後に備えてそれなりのお金を準備していきたいと考えているかと思いますが、老後資金の準備用としては、確定拠出年金口座を利用することはまず第1に考えるべき手段かと思います。

 

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