まちがいだらけの大規模修繕

まちがいだらけの大規模修繕
伊藤 洋之輔
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自宅用でも、投資用でも、区分所有マンションを所有すると、毎月発生する費用としては、管理費、修繕積立金があります。
管理費は、建物の清掃だったり、常駐だったり巡回だったりの管理人さん、などにかかる費用です。
一方、修繕積立金は、建物自体の将来の修繕工事に備えて、積み立てておくお金で、外壁や、屋上、給排水管といった大きなものから、防犯カメラの設置や自転車置き場の整備などの小さめのものまで、あらゆる工事に使われます。
投資用として区分所有マンションを購入する場合は、管理費、修繕積立金は当然考慮に入れて、それでも収支が合うかという計算のもと家賃収入が発生するのでまだいいですが、自宅用として購入した場合、これらの費用が割高に設定されていたりすると、純粋に所有者の方にとっての費用負担が上がるのみということになってしまいます(もちろん投資用でも低いにこしたことはないですが)。
最近、管理費については、別の管理会社から相見積もりを取って、すでに利用している管理会社に対して価格交渉をしたり、場合によっては管理会社を変更したり、といった形で、管理費を下げようという動きが出てきていると思います。マンション管理のコンサルタントという職業の方も現れてきているようです。
一方、本書は、修繕積立金の方に注目しており、長期修繕計画があってその工事をそのまま実行するのがよいかのように思われているかもしれないけど、管理会社の提案を鵜呑みにするのではなく、本当にその工事が必要なのか、きちんと検討する必要がありますよ、ということを指摘しています。
屋上防水工事などは、10年経過したからやりましょうではなく、実際に少し水漏れになったところで、大きな問題に至る可能性は低く、少し水漏れになってから取り組んだところで問題ないでしょう、ということです。
マイホームとしてマンションを購入された方がどのくらいの意識を持って、建物の維持管理に取り組まれているのかわかりませんが、管理組合まかせ、またもし管理組合の理事とかになったとしても、管理会社まかせ、になっていることが多いのが実際のところではないかと思います。というのも、それなりに専門的な知識を持っていなければ、管理会社に「長期修繕計画ではこうなっており、修繕積立金も十分貯まっていますから、この工事をやりましょう」なんて、言われたら、そのままOKということになってしまうのではないかと思います。
修繕積立金は一度払ってしまうと共有の財産になってしまいますが、そうは言っても、もとは自分の大切なお金です。その使い方はきちんと考える必要があるかと思います。無駄な工事をやめれば、現在払っている修繕積立金を半額にするなんてことも、ひょっとしたら可能になるかもしれません。
マイホームとしてマンションを所有されている方、投資用で区分所有マンションを所有されている方、そして、投資用で一棟ものを所有されている方、などの方は、本書を一度は手に取って頂くのがよいと思います。大規模修繕工事を行う業者の方が、マンションの所有者のためにホンネで書かれた、おそらく唯一の本だと思います。

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