耐震偽装マンションを考える――前書きに代えて
序 章 いま、新築マンションの二極分化が静かに進んでいる。
1 好調そうに見える市場の水面下で進む二極分化
多くの三流マンションと、わずかな一流マンション
2 ALC版の外壁は構造面のレベルダウン
戸境壁の構造がパンフレットと違っていたケースも
3 「額縁」の省略や「便所の帽子掛け」は設備仕様のレベルダウン
ほんのわずかな工事費で、住み心地やセンスに大きな差
4 販売価格だけが高いエセ「高級マンション」にご注意
価格が高くなるほど、一流と三流の差が開く傾向
5 ジョイント・ベンチャーで、売主にゼネコンが入っていたら要注意
工事の発注者と受注者の利害は、基本的に相反する
6 本当に良い物件は確実に売れている
「立地環境」「物件内容」「売主」「建設会社」「価格」のバランスがポイント
第1章 全体計画の一流と三流は、意外に見落とされている。
7 軟弱な地盤、不均一な地盤は基礎に十分注意を
長い基礎杭は、大地震の際の損傷が心配
8 立地環境で一番重要なのは隣地。仮想建物などの「日影図」をチェック
空き地や駐車場などがあれば、必ず何か建つ
9 F型やE型の配棟計画は日影ができやすく、プライバシー上も問題
広い敷地では棟を分け、向きの良い住戸をつくるのが一流
10 高さ45m以内なら15階建てではなく14階建てに
多少、中庭などは狭くなるが、十分な階高を確保できる
第2章 共用施設の一流と三流は、見た目のイメージとは違う。
11 見かけは派手でも、使わない共用施設は「客寄せパンダ」
AVルーム、キッズルーム、噴水、温泉施設などが典型
12 エレベーターの数は50戸に1基を基準に、「三捨四入」が目安
無駄な共用施設より「2戸1エレベーター」「3戸1エレベーター」
13 駐車場は、台数とともに出し入れがしやすいかに注意
3ナンバーになると駐車スペースの広さも重要
14 本当に「ホテルライク」な高級マンションとは
本物のコンシェルジュ・サービスやバレット・パーキング・サービスを
第3章 構造の一流と三流は、将来大きな差が出る。
15 まず、マンションの構造の基本を知ろう
地盤から基礎、建物形状など全体のバランスが重要
16 マンションの基本性能を決めるのは「天井高」ではなく「階高」
「階高」は一度決めると変えられないが、「天井高」はごまかせる
17 床と天井の仕上げは「二重床・二重天井」がベスト
「直床」「直天井」にして階高を抑え、工事費を削減するケースが増加中
18 アウトフレーム逆梁工法は、それほど優れた構造ではない
柱と梁の位置を動かし、リビング・ダイニングの窓を高くしただけ
19 同じように見える「外壁」も、一流と三流でこんなに違う
コストダウンのため、一部にALC版を使うケースが増えている
20 天井に大梁が垂れ下がっている「ギロチン」は、三流マンションの証拠
圧迫感があり、照明器具が設置しにくく、リフォームにも制約
21 外廊下、外階段に「鉄骨」を使うのは明らかに配慮不足
必ずびが発生し、衣服が汚れたりメンテナンス費用も大変
22 戸境壁は、コンクリートの上にクロス直貼りが一流
二重構造は「太鼓現象」が起こりやすく三流
23 住戸内の間仕切り壁は、石膏ボードの厚みがポイント
9・5�を使うのは三流、12・5�を使うのが一流
24 床のスラブは特殊な構造より小梁を入れたほうが遮音性に優れる
「アンボンドスラブ工法」や「ボイドスラブ工法」の遮音性は疑問
25 100年コンクリートは本当に100年持つのか?
設計上の目安であり、誰も保証するわけではない
26 フリープランを売り物にした「SIマンション」は疑問
キッチンや浴室の位置がばらばらになり、音の問題が多発
第4章 間取り・内装の一流と三流は、住んでから気がつく。
27 「羊羹の輪切り」「田の字型」住戸は日本だけのローカルスタンダード
デベロッパーやゼネコンに都合がいいだけ
28 縮尺を合わせた図面と型紙で、家具やベッドを置くシミュレーションを
漠然と眺めていても、間取りの問題点は分からない
29 70�くらいまでの3LDKなら、LDは長方形が使いやすい
LDが12畳以下の正方形だと、食卓やソファセットが置きにくい
30 マンションのキッチンは、見かけよりも実際の使いやすさが大事
70�台なら「I型」がお勧め。シンクと脇壁のスペースも大事
31 トイレを見れば「住まい」としての配慮が分かる
ペーパーホルダーは左側、便器の先端からは60�以上余裕があること
32 収納率の表示に注意、マンションなら7~10%が目安
床から天井まですべて使えるのが本来の収納
33 本当に高齢者対応を考えた間取りとは?
3LDKならすべて洋室、トイレ付きの主寝室なども
34 住空間のディテールは、子供たちの感性に大きく影響する
住戸内の扉など建具の上端をえる
35 フローリングの貼り方は長辺方向に合わせるのが常識
廊下とLDが直角になるときは、扉の下に見切り材をはさんで調整
第5章 設備仕様の一流と三流は、デベロッパーのセンスを反映。
36 「オール電化マンション」にはデメリットも。ガスと電気は併用が一番
コンロの火力が弱く、貯湯タンクがスペースを取る
37 「竪排水管」の材質に、一流と三流がくっきりと表れる
すべて「鋳鉄管」なら一流、「耐火被覆二層管」なら三流
38 24時間換気システムにもいろいろ。給気排気とも機械式が一流
さらに冷暖房効率の高い熱交換器付きならベスト
39 エアコンは、室外機置き場やスリーブの位置に注意
横長リビングで室外機を2段積みにすると、冷暖房に影響することも
40 リビングや寝室の照明には、気持ちがくつろぐ「白熱灯」を
ただし、熱には注意。ダウンライトの下に扉が来ると危険
第6章 超高層マンションはお勧めしないが、選ぶなら一流を。
41 超高層は建物を軽くするため、様々な制約が
間取りが「ごった煮」になりやすく、採光・通風などにも問題
42 ALC版の外壁のつなぎ目が切れ、雨漏りするおそれ
30階建てくらいまでなら、RC造で版状にすることも可能
43 床スラブはデッキプレート、戸境壁は乾式で遮音性に難点
戸境壁については、鉛板入りのボード二重張りならまだ安心
44 長周期の大地震では未知の影響の可能性も
日本の耐震基準は、比較的短い周期の地震を想定
第7章 デベロッパー、ゼネコン、設計事務所の一流と三流。
45 デベロッパーとしてのレベルは設計規準書で決まる
毎年見直しを行い、すべての物件で適用しているのが一流
46 「数字でマンションをつくる」のが三流デベロッパーの共通点
向きの悪い住戸ができても平気、ケチでスピード最優先
47 「カウンターセールス」と「鞄セールス」の違いを知ろう
販売のスタイルにも、一流と三流がはっきり出る
48 ゼネコンとは総合請負業のこと。工事全体の調整と管理が役目
工程管理や工事の質の確保ができないようでは三流
49 デベロッパー言いなりの「便利大工」的設計者では意味が無い
本来の役割が忘れられ、用地情報まで求められる動きも
第8章 賢い購入者になるための碓井流アドバイス。
50 内覧会で選択ミスに気づいても手遅れ。契約前に専門家に相談を
複数の専門家の意見を聞いて、比較するのも手
51 価格はグロスだけでなく�単価で比較。20%超高いなら要注意
逆に20%超安い場合も注意を
52 工事「監理」の重要性を購入者はもっと知って欲しい
欠陥マンションには、デベロッパーやゼネコンの体質も関係
53 マンションは現場での手づくり。問題は誤差の程度
100分の1を大きく超えるようなら下地調整などが必要
54 きちんとした住戸の引渡しには、「適正工期+2カ月」は最低必要
無理に工期を短縮すると手直しが多くなり、みんな不幸
55 賢い購入者が増えることが、日本のマンション市場を良くしていく
現在の新築マンション市場には、数字優先の危険な兆候
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=4-478-68030-2
建築家である著者が、マンションの構造や建築といった観点から「買っていい一流マンションダメな三流マンション」の違いを説明している本です。
私がいう「一流のマンション」とは、ブランド立地で内装設備も豪華な「高級マンション」を指しているのではありません。そうではなく、物件の価格帯に関係なく、構造や仕様において基本的な性能を確保しているのが「一流」です。つまり、間取りや内装設備で「住まい」としての配慮が行き届いているのが「一流」といえます。
これに対して「三流」マンションは、「住まい」をつくるという発想がなく、安易な商品企画、節操のないコストダウン、見た目の派手さを特徴としています。 (P.32)
どうせ買うなら、やはり見た目の派手さよりは、住み心地がよく、リラックスできる居住空間を買いたい、ですね。
「住まい」としての配慮があるマンションかどうかをチェックする典型的な目安として、私が20年以上前から提唱しているのが、トイレのペーパーホルダーの位置です。
(中略)
便器に座って左側にあるのが正解です。
日本人の約8割は右利きといわれています。右利きの人の場合、便器に座って左側にペーパーホルダーがあるほうが、引き出しやすく、引き出すペーパーの量も少なくてすむのです。
(中略)
また、トイレでは便器の先端から正面の壁または扉のレバーハンドルまでの距離をぜひ、測ってみてください。
60cm以上あれば「一流」、ぎりぎり55cmあればまだ「二流」です。 (P.158)
こういったポイントは普通の人は知らないと思います。ここでのポイントは、単にトイレのペーパーホルダーが左か右かということではなく、左側につけるような設計者であれば、それからの類推として、他の点についても住みやすいように設計されているだろう、ということです。それを見分ける一つのポイントがトイレのペーパーホルダーの位置であり、扉までの距離というわけです。
最近、超高層マンションの供給が大幅に増えており、販売も比較的好調のようです。眺望の良さや様々な共用施設(展望室など)が、購入者にアピールしているのでしょう。
しかし、私は基本的に超高層マンションに否定的です。眺望はそのうち慣れてしまいますし、派手な共用施設も使われなくなるものが少なくありません。むしろ、超高層特有の構造が、「住まい」としての性能や機能に悪影響をもたらすからです。 (P.200)
大規模なマンションの場合、戸数が多いので共用施設の負担が少なめで済むかもしれませんが、結局あまり使わないのであれば意味がないですね。とは言うものの、賃貸マンションにはないので、あったら便利なんだろうなぁ、と思ってしまうのも事実です。このあたりは、実際に住んでいる友人に聞いてみるのがよいでしょうね。
他にも、「重量衝撃音に対する遮音等級はLH50以下のものを選ぶ」とか、「コンクリートの耐久設計基準強度が24N以上」とか、かなりテクニカルなことが書かれています。
ぼくら素人にとっては、これらを完璧に勉強して実際に買うときにチェックするというのは無理だと思います。こういう場合はやはり「餅は餅屋」で、こういった本を読みながらそういったチェック項目があるんだなということをおおまかに理解しておいて、実際にはプロに依頼してチェックしてもらうのがよいのではないかと思いました。
実際にこの本の著者がやっている、現地・モデルルーム同行サービスや、家を買いたくなったらの著者が行っている不動産調査・購入代行事業、そして株式会社さくら事務所で行っている中古マンションインスペクションなどを利用するのがよい気がします(どれも同等のサービスかどうかはわかりませんが、近い気がします。他にもいろいろあるのかもしれませんが、とりあえず気づいたものだけ載せておきます)。
どんな調査結果、報告書が出てくるのかわかりませんが、それを見たとき、また結果に対する説明を受けたときにチンプンカンプンにならない程度には、ぼくらも事前に勉強しておく必要があるかもしれませんね。
費用は5~10万円程度かかるようですが、数千万円の買い物をするわけですから、素人判断でエイヤッで買うリスクを考えれば、決して高いものではないと思います。
ということで、建物としてのマンションの見方を勉強するには図も使われていてわかりやすく、詳しく書かれているのでよいと思いました。
いろいろ勉強すればするほど買えなくなりそうな気がします。