スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学
吉本 佳生
以前から、物の値段って、一体何なんだろう、、、と思っていたのですが、この本はいろいろな観点からものの値段を説明してくれます。しかも、例がすべて身近なものなので非常にわかりやすいです。
取引コストという考え方がこの本で最初に説明されているですが、これは何かモノやサービスを購入するために必要となる時間や労力、心理的負担などです。
例えば、社会人になってから初めて一人暮らしを始めたのですが(会社の寮ですが)、某ビックカメラの広告を見てテレビとビデオのセットを買うために、朝の6時半頃からお店に並んだことがあります。しかし、残念ながらもう少しのところで、限定数に達してしまい購入することはできませんでした。これは本当に無駄骨に終わってしまったわけですが、実際に買えたとしたら、どれくらい安く買えたことになるのでしょうか。
詳細はあまり覚えていないのですが、通常の価格より15000円程度安く買えたとしましょう。すると、普段であればお店に行ってそのまま買えるところが、6時半から並んでいたわけですから、3時間半ほど余計に時間をかけていることになります(すでに買う機種は決まっていたとします)。つまり、自分の時間を3時間半ほど余計に使うことによって、15000円節約できたわけですから、時給に換算すると4285円に相当します。これと、普段の自分の時給を比べて、どちらが得なのか、考えましょう、といったものが取引コストの一例です。
もっとも、この3時間半の並んでいる間に本を読んでいれば、その3時間半はそれほど無駄にならない3時間半になるでしょうから(家とかで本を読むことに比べれば快適さはもちろん低下しますが)、15000円の節約を得るために支払った対価はかなり小さなものとなるでしょう。
ということで、
- 自分の時給をある程度把握しておくこと
- 同じ時間で2つ以上のことをすること
が自分の時間を有効に使う上で大切なポイントになるのではないかと思います。
ここで自分の時給というのは、ざっくりですが、例えば年収400万円の人であれば、「1日12時間働いていて、1ヶ月当たり20日働いている」と仮定すると、年間2880時間働いていることになるので、時給1389円と計算できます。年収700万円の人であれば、時給2430円となります(年収が異なれば、労働時間を異なる気がしますが、ここでは一定と仮定しています)。入社したての頃のぼく(もちろん、今もですが)は、時給換算したら4285円には遠く及ばない額だったので、当時のぼくの行動(試み)は成功していれば経済学的には合理的な行動だったと思われます(実際に購入するためには、あと30分早く行く必要があったかもしれません)。
それから、「同じ時間で2つ以上のことをする」という意味では、移動時が最もそのように使いやすい気がします。例えば、同じ1時間の通勤時間の人が2人いたとして、一人は次のような通勤パターンだったします。
- 家から最寄り駅 徒歩15分
- 電車で移動 15分
- 乗り換え 5分
- 電車で移動 10分
- 最寄り駅から会社 徒歩10分
また、別の人は次のようなパターンだったとします。
- 家から最寄り駅 徒歩5分
- 電車で移動 50分
- 最寄り駅から会社 徒歩5分
この場合、ぼくが好むのは後者のパターンです。前者の場合、まず徒歩の時間が25分と長くなっています。徒歩の時間は耳から何かを聞いて学習するという形では使えますが、本を読んだりするのは難しいですし、できることは限られてしまいます。一方、電車に乗っている時間は、座れたりすれば比較的自由に読書したり、何か聞いたり、仮眠したり、といろいろなことが可能です。つまり、電車に乗っている時間は必ずしも何かしなくちゃいけないというわけではありませんが、選択肢が広がるわけです(こんなことは誰もがご存知とは思いますが)。
そして、前者の場合、途中で乗り換えが含まれているため、電車の中で何かやり始めようとしたとしても、乗り換え時にいったん集中力が途切れてしまいます。電車の時間25分を効率的に使うのは難しいでしょう。一方、後者は連続した50分という時間が使えるので、時間を有効に使えるのではないでしょうか。もちろん電車が満員で何もすることができない(せいぜい、耳から何か聞くくらい)、という場合もあるでしょうが、通勤時間帯を多少ずらせばそれはある程度緩和されるでしょう。前者の場合、時間帯をずらそうが、そもそも有効に使いづらいパターンなので限界があります。
(理想は通勤時間ゼロですが、現実的には難しいでしょう。また、前者のパターンのいい点を挙げるとすれば、歩いている時間が長くなるので、健康面ではポジティブだということでしょうか。)
かなり話が脱線してしまいましたが、時間だけでも、お金だけでもなく、その両者のバランスを取りながら生活していくことが自分の人生を有意義に過ごすために重要なのではないかと思います。
本の話に戻りますが、「スタバではグランデを買え!」というタイトルを見て、実際に読むまではこのタイトルの意味が不思議でなりませんでした。というのは、日本では(この著者が仮定しているのは)
ショート、トール、グランデ
の3種類のようですが、こちらイギリスのスターバックスでは、
トール、グランデ、ベンティ
の3種類だからです。なぜ、著者は真ん中のサイズをを買えと言うんだろう?と不思議でした。しかし、実際に読んでみると著者の主張は、最も大きなサイズを買え、という話でした。
ちなみに、日本のスターバックスのウェブを見ると、現在は以下の4種類になっているようですね。
- ショート(S) 240cc
- トール(T) 360cc
- グランデ(G) 480cc
- ベンティ(V) 590cc
ということで、正しくは「スタバではベンティを買え! 」ということになるでしょうか。
ちなみに、日本でどうかは知りませんが、こちらのスターバックスではサンドイッチなどは持ち帰りの場合と、店内で食べる場合とで価格が異なるようになっています。店内で食べる場合は、食べる場所を含めたサービスを提供しているのでその分高くなっているのでしょう。でも、飲み物は同じ料金になっているような気がするのですが、、、不思議です(捨てなければならない紙カップの料金と、再利用可能なマグカップ+洗浄代+場所代のバランスで、同じになっているのでしょうか、、、)。
それにしても、トールが最も小さいサイズって、感覚的によくわからないのは、ぼくだけでしょうか、、、
さらに、ベンティって何語で、どんな意味なんでしょうかね、、、
明けましておめでとうございます。
いつも楽しく読ませて頂いている書評のエントリーですが
特に今回の「実際に読むまではこのタイトルの意味が不思議で
なりませんでした。」の件には、私的には思わず爆笑してしまいました。
今年も、yokokenさんが、勉強に、旅に、読書にと活動的に充実した
日々を過ごされることを、ブログの一読者として期待致しております。
以上
白犬さん
あけましておめでとうございます。
早速、2008年初コメントを頂きましてありがとうございます。
グランデの件は、真剣に考えるほど理解不能でした。日本でスターバックスに行くことはほとんどなかったので、まさかサイズ設定が違うとは、、、
MBA生活終了後、どの程度書いていけるかわかりませんが、できるだけ書いていきたいと思いますので、今後とよろしくお願い致します。