先々週は、なんとかGlobal Bankingのグループレポートをやっつけて、そのままモロッコに行き、帰ってからも日帰りでロンドンに行ったりしていたため、バタバタしていましたが、やっと落ち着いてきました。ということで、MBAステージの秋学期を簡単に振り返ってみたいと思います。
今学期の特徴は、何と言っても交換留学(Exchange Programme)だと思われます。クラスの半数近くの人が交換留学として、世界各地のスクールに行ってしまう反面、マンチェスターに残っていたとしても、世界各地のスクールから来ている同じMBAの学生の方と机を並べて勉強することができます。また同じマンチェスターでもエグゼクティブMBAの方も同じ授業を受けるので(これは夏学期も同様ですが)、そういった意味でも、ディプロマステージでの授業とは雰囲気が異なります。
今学期は以下の3科目を受講しました。
- Advanced Corporate Finance
- Corporate Reputation and Competiveness
- Innovation and Trends in Global Banking
Innovation and Trends in Global Banking のみ30単位相当で、他の2つは15単位分です。ということで、課題のボリュームとしてはこのGlobal Bankingが最も重かったのは間違いありません。以下、各科目について。
1. Advanced Corporate Finance
このエレクティブはディプロマステージで学んだコーポレートファイナンスをさらに発展させた内容として、以下の5つのテーマについて勉強しました。各テーマごとに担当する先生が異なり、それぞれ基本的に2コマずつのボリュームでした。
- Risk Management
- The interaction between investment and financing decisions
- Corporate Governance
- Initial Public Offerings and cross-listing
- Private Equity and Going public/private
ぼくの勝手なイメージだと、MBAで勉強するコーポレートファイナンスと言うと、「フリーキャッシュフローを作って、WACC計算して、NPVを求める」で終わってしまう気もするのです(ディプロマステージでのコーポレートファイナンスは確かにこの内容が大半を占めています)が、さらに進んだ内容としてこの科目はかなり勉強になりました。
Risk Management はデリバティブの基礎が中心で、為替リスクなどをどのようにヘッジするか、という話がメインだったので、個人的にはそれほど得るものはありませんでした。しかし、他のテーマに関してはどれも今まで知らなかった視点を学ぶことができたという意味においてかなりよかったです。
特にCorporate Governanceでは、元NYSE会長のリチャード・グラッソー氏の高額報酬についてのケーススタディを勉強し、アメリカにおけるシニアマネジメントの巨額報酬を知って(ニュース等で個別には知っていましたが、グローバル比較という意味で各国の比較を見たのは初めてでした)、驚きとともに、そこまで差があるというのは何かおかしいのではないかという気がしました。実はこのテーマについてもエントリを書こう、書こうと思っていたのですが、なかなか時間が取れずまだ書けていません。書く気力が起きたら、近いうちに書きたいと思います(試験が終わってしまうと、モチベーションが低下してしまって、、、)。
ちなみに、この科目の試験勉強(100%試験で評価されます)対策として、いくつかについて内容をまとめたエントリは以下の通りです。
- Motivation for cross listing
- IPO時における取引所の選択基準
- Adjusted Present Value Method (APV法)
- Going public / private
- Agency and Asymmetric Information Considerations
- MBA最後の試験: アドバンスドコーポレートファイナンス
2. Corporate Reputation and Competiveness
今学期、ファイナンスとはかなり遠い唯一の科目がこのコーポレートレピュテーションでした。視野を広げるにはとても参考になりました。
内容は以下の通りで、それに各種ケーススタディを加えたものでした。
- Reputation as a strategic framework: the reputation chain
- Measuring and managing reputation
- Crisis management
- Corporate Governance & Reputation
- Visual Identity
- The Reputation of Nations
- Employee branding
- E-Reputation
- CEO Reputation
- Managing Change in Reputation
この授業を担当したGary Davies教授たちによって開発されたCorporate Character Scale というフレームワークを中心に学びました。これは7つの次元(こちらに書きました)によって、Corporate Character(企業を人間のパーソナリティを使って表現するとどのようなものになるか)を認識しようとするものですが、外部の目(お客様の認識)と内部の目(マネジメントおよび従業員の認識)でどのように異なったCorporate Characterを持っているか、そしてそれらが異なった場合にどのようなことがわかるのか、などを勉強しました。
このCorporate Characterは、誤解を恐れずに言えば、企業文化を数値的に計測するものです。例えば企業が合併する前に、それぞれの企業内でCorporate Character Scaleを測定し、どの程度企業文化が異なるのかを知ることなどにも使えるようです。ひょっとしたら、M&Aのデューデリジェンスの際の一項目として、企業文化の測定が加えられる日が来るかもしれません。
評価は50%がグループプレゼン、残り50%が個人レポートになっています。グループプレゼンではクライシスマネジメント(危機管理)をテーマに、企業や国などを自分たちで選び、クライシスマネジメントについて分析するものでした。ぼくたちのグループでは、バービー人形を作っている米国のマテル社を取り上げ、2007年夏以降に起きた中国製品を中心とする一連のリコール騒動について分析をしました(これについてもあらためてご紹介できたらいいなぁ、と個人的には思っています)。このグループワークでは、6人のグループで半分の3人が交換留学で来ていた方だったのですが、そのうちの一人が突然ミーティングに来れなく(来なく?)なったりして、マナーとしていかがなものかと思うことがありました。もちろん、MBSでもたまにそういう人はいるのですが、どこのスクールでもそういう人はいるんだなぁ、と認識した次第です。
また個人課題の方は、自分が働いていた(いる)企業について、レピュテーションがどのようにマネージされているかを分析し、実践的な提案をしろ、というものです。締め切りは年明けなので、こちらはまだ取り組み始めたばかりです。
Corporate Reputation and Competitiveness
Gary Davies Rosa Chun Rui Vinhas Da Silva
担当教授Gary Daviesの著書です。Corporate Character Scale等についてケースを交えて詳しく書かれています。ほぼ講義内容と同じです。
3. Innovation and Trends in Global Banking
この授業では、半分が通常の講義形式で、残り半分はスタンフォード大学が開発した銀行経営シミュレーションゲームでした。講義の方では、ファイナンシャルコングロマリット、ALM、デリバティブを使った金利リスクマネジメント、Basel IIなどのレギュレーション、プロジェクトファイナンス、テクノロジーとバンキング、プライベートエクイティなどを扱いました。
また評価は個人レポートが2本と、銀行経営ゲームに関するグループプレゼン、グループレポートとそれなりに盛りだくさんでした。評価に影響しないグループプレゼンなどもあり、他の2倍のクレジット(単位)だけあって、それなりにボリュームはありました。1つ目の個人レポートでは、ファイナンシャルコングロマリットを一つ選び、分析するというものです。過去5年分のパフォーマンスについていろいろな視点から分析したり、今年のサブプライム関連の影響を分析したり、けっこうしんどい内容でした。ぼくはせっかく英国にいることだしと思い、HSBCに関して分析しました。
2つめのレポートでは、基本的には香港ディズニーランドのプロジェクトファイナンスの評価を行うものです。予想入場者数などから、売上げ予測、キャッシュフローの計算をして、プロジェクトのファイナンスのレンダーとしてのチェース銀行の立場からプロジェクトを評価したり、香港政府やウォルトディズニーの立場から、プロジェクトを評価したり、といった内容でした。
銀行経営ゲームに関しては、毎週エントリを書いてきましたので、詳しくは以下をご覧頂ければと思います。リテールバンクの経営視点という意味では、とても勉強になりました。基本的には様々なパラメータを入力していくだけですが、バランスシートのあらゆる勘定を同時に管理しなければならない難しさを理解することができました。また最後のグループプレゼンでは、各グループの戦略が明らかにされるわけですが、自分たちとは違ったところを重視しているグループもあり、得るものがありました。
- Global Banking の授業
- ROEとROAの計算方法
- 銀行経営は難しい
- 銀行経営は難しい その2
- 銀行経営は難しい その3
- 銀行経営は難しい その4
- 銀行経営は難しい その5
- 銀行経営は難しい その6
Modern Banking
Shelagh A. Heffernan
バンキング全般について書かれています。
Dictionary of Banking Terms (Dictionary of Banking Terms)
Thomas P. Fitch
この用語集は、バンキングの用語を調べるのにとても便利でした。
Commercial Banking: The Management of Risk
Benton E. Gup James W. Kolari
コマーシャルバンクについて理解を深めるにはいい本だと思います。
International Project Analysis and Financing
Gerald Pollio
プロジェクトファイナンスに関する本で、少し古めです。よい本なのかもしれませんが、あまり深くは読まなかったので何とも言えません。
Introduction to Project Finance (A Volume in the Essential Capital Markets Series)
Andrew Fight
タイトルにある通り、イントロダクションということで基本的なことしか書かれていませんが、とても平易に書かれているためわかりやすいです。また最後にGlossaryもついているので、プロジェクトファイナンスの用語を調べるのにも便利でした。
プロジェクト・ファイナンス
小原 克馬
プロジェクトファイナンスの全体像を理解するにはとても参考になりました。
ということで、秋学期(MBAステージ)でした。
残すはいよいよIBプロジェクトのみです。