ブルー・オーシャン戦略については、以前このブログでも触れましたが、やっと書籍版を読むことができました。
ブルー・オーシャン戦略は、血みどろの戦いが繰り広げられるレッド・オーシャンから抜け出すよう、企業にせまる。そのための手法は、競争のない市場空間を生み出して競争を無意味にする、というものである。縮小しがちな既存需要を分け合うのでもなく、競合他社との比較を行うのでもない。ブルー・オーシャン戦略は需要を押し上げて、競争から抜け出すことをねらいとする。(P.4)
数学の言葉で表現すると、線形変換することによって座標軸を全く別のものに変えてしまい、その新しい市場空間で顧客に付加価値を提供していく、といったイメージなのでしょうか(よけいわかりにくいかもしれませんが)。例えば、家庭用ゲーム機の例で言うと、ソニー、マイクロソフト、任天堂といった3強のプレイヤーがいたわけですが、ソニーは従来からの路線(次元)をひたすら極め、高性能なプロセッサを搭載し、グラフィックの精度を上げるという、従来の延長線上でプレーステーション3を開発し、市場に提供した。しかし、任天堂はWiiで今までとは違ったまったく新しい遊び方を提供し、一気に顧客層を拡大、これによって需要を押し上げることに成功した、と解釈することができるかと思います。同じ家庭用ゲーム機という括りととらえることも可能か知れませんが、両者の戦っている土俵は別物になってしまったのではないでしょうか。
一流企業として名を馳せる企業の多くは、繰り返し新しい市場空間を生み出して自己変革を進めてきた。その意味で、永遠のエクセレント・カンパニーはいまだかつて存在しないが、優れた戦略をたゆまず実行して、エクセレンスを保ちつづけるのは可能だといえる。(P.272)
ブルー・オーシャンを切り開いたとしてもすぐに競合他社が参入してくるので、いつまでも優位性を保つことは難しいようです。しかし、優良企業は、その都度新しい市場を創造していくことでエクセレンスを保ち続けていくのだ、と。
ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)
W・チャン・キム レネ・モボルニュ 有賀 裕子
本の構成としては、以下のような三部構成になっています。
第一部 ブルー・オーシャン戦略とは
第二部 ブルー・オーシャン戦略を策定する
第三部 ブルー・オーシャン戦略を実行する
策定するだけでなく、いかにして実行していくか、やはりこれが重要だと思います。
献身、信頼、自発的な協力などは、単なる姿勢や行動にとどまらない意味を持つ。これらは、いわば無形資本なのである。信頼感に突き動かされた人は、周囲の意図や行動を強く信じる。献身への意欲あふれる人は、自分の利益さえ犠牲にして会社のために努力しようとする。
ブルー・オーシャン戦略を策定して、首尾よく実行した企業に尋ねてみるとよい。経営者たちは、成功を勝ち取る上でこの無形資本がいかに重要か、よどみなく語るだろう。(P.240)
いろいろなケースが取り上げられていますが、日本企業の例も多く、ソニーのウォークマン、ドコモのiモード、QBハウスの散髪、トヨタのレクサスなどが取り上げられていました。QBハウスが出てきたのには、少し驚きました。グローバルにどれほど知名度があるのか知りませんが、成功例として有名なんですかね。
ストラテジーを勉強する上で、現在においては必読の書であることは間違いないでしょう。