木曜日に予定通りデリバティブの個人レポートを提出したので、夏学期の課題は全て終了しました。ということで、簡単に今学期を振り返ってみたいと思います。
まず、この夏学期は一般的には多くの学生はインターンシップをもらってどこかで働きます。そしてこのインターンシップは終了後15000語のレポートを書くことによって30単位(通常の選択科目2つ分)の単位を得ることができます(もちろんきちんと成績もつくはずです)。一方、希望通りインターンシップをもらえなかった学生およびインターンシップを希望しない学生は学校でエレクティブ(選択科目)や、修士論文(Dissertation)などの中から自分の希望するものを選択して勉強します。
ぼくの場合、エレクティブを3科目選択しました。
- Derivatives for Quants and Investment Bankers
- Principles and Practice of Entrepreneurship
- Real Options
それぞれが15単位なので、合計45単位分に相当します(落とさなければ、ですが)。来年の1月からIBプロジェクトが始まるわけですが、IBプロジェクト前のMBAステージである夏学期、秋学期で合計90単位以上取得することが卒業のためには必要です。それぞれの科目について簡単に振り返ってみたいと思います。
1.Derivatives for Quants and Investment Bankers
授業のタイトルには「for Quants」なる文字がありますが、あくまで一般的なMBAの学生を対象とした授業なので、内容はデリバティブ全般の入門的なものになっています。テキストも以下のジョン・ハルの本なので、クオンツ向けの内容だと思って受講するとがっかりします。
Options, Futures and Other Derivatives
John Hull
フィナンシャルエンジニアリング―デリバティブ取引とリスク管理の総体系
ジョン ハル John C. Hull 三菱証券商品開発本部
日本語版はまだ第五版までしか出ていないかもしれません。
でも、おそらく先生の専門なんだと思いますが、FDM(有限差分法)については基礎的なことですが、意外と時間を割いて説明していました。どれだけの学生がついていけたかは不明ですが。
そして、評価ですが、10%のウエイトの試験が2回と、80%の個人プロジェクト(レポート)となっています。以前も書きましたが、試験(1回目、2回目)は2回とも決してやさしくありません。初めて勉強する場合は、教科書を一度読んだ程度だと半分できればよい方といった難易度だと思います。教科書読みながら、自分で手を動かして計算に慣れていなければ、かなりの苦戦を強いられること間違いありません。
そして、「レポートですが、デリバティブに関するものであれば何でもいいよ」「どのくらい書くかはあなた次第」といったスタンスなので、本来試験ができない場合はこのレポートで挽回しなければならないにもかかわらず、依然としてハイリスクな状況です。ハイリスク・ロー(ミドル?)リターンといったあたりでしょうか。
まだ成績が返ってきていないので、上記はあくまで推測ですが。
2.Principles and Practice of Entrepreneurship
アントレプレナーシップに関する授業です。「アントレプレナーとは」から始まり、アントレプレナーの特徴、テクノロジー、企業の成長モデル、ファイナンスなどに関して、実際のケースを使いながら勉強しました。ゲストスピーカーとして実際のアントレプレナーの方がいらっしゃったり、マンチェスターサイエンスパークの元所長もいらっしゃいました。
スケジュールとしては、1週間連続で授業があり、最終日の午後に、復習のスキを与えることなく試験(60%)に流れ込みました。こちらの試験はエッセイ形式で、持ち込み可の試験なので、デリバティブの試験と比べるとまだ親切です。でも、ディプロマステージでの試験同様、45点から75点くらいに分布する傾向がるので、やはりノンネイティブのぼくらに高得点はやさしくありません。
ちなみに、テキストは以下の2冊でした。Technological Entrepreneurismの方は、大昔のアントレプレナーの話から書いてあって、けっこうおもしろい本でした。タイトル通り、Technologicalなアントレプレナーシップのみを扱っており、他の一般的なアントレプレナーシップはこの本では特に扱っていません。
Technological Entrepreneurism: Enterprise Formation, Financing and Growth (Engineering Management Series, 5)
M. W. Cardullo
Mastering Entrepreneurship: Your Single Source Guide to Becoming a Master of Entrepreneurship with Business Planpro 4.0
Sue Birley
そして、グループプロジェクト(レポート)では、ベンチャーキャピタルの日英比較を行いました。キャピタリズム(資本主義)としては、LME(Liberal Market Economy)とCME(Coordinated Market Economy)とざっくり分けることが可能な両国ですが、ベンチャー企業がファイナンスで苦労していると言う意味では大きな差はない、という印象を受けました。ただし、ビジネスエンジェルの浸透度合いという意味では、英国の方が明らかに進んでいるようです。
3.Real Options
リアルオプションの授業ですが、コーポレートファイナンスでやったようなオプションの基礎については理解しているものとして授業が進められていきました。バイノミアルツリーから始まり、サミュエルソンのPerpetual American Option、そして、Perpetual Exchange Optionなどを勉強しました。そして、競合環境における、リーダー、フォロワーの市場参入の条件までを扱いました。けっこう幅広く扱ったものの、実務的に深いところまでは立ち入らなかった感があります(例えば、個人的には、モンテカルロによるボラティリティの推定などを期待していました)。
評価は、50%が試験、もう50%がグループワークでした。試験は比較的簡単な計算問題でしたが、計算の前提(問題をどのようなリアルオプションと認識するか、どのようなモデルを適用するか)および解釈(計算した結果のオプションバリューからどのようなことが言えるか。その結果はどのくらい妥当なものか、そのオプションはビジネス上どのように生かせる可能性があるか、など)もきちんと書かなければならず、時間的にはギリギリでした。
そして、グループワークですが、こちらはUNITEという学生寮の開発&管理を手がける上場企業(株価のボラティリティからリアルオプションのボラティリティを推定可能)について、どのようなリアルオプションが考えられるか、実在の、または想像上のリアルオプションを考えて、バリューを評価し、現在の市場の評価と比較したりしました。扱ったテーマが不動産(学生寮)というキャッシュフローが予測しやすい資産だったこともあって、リアルオプションの題材としてはとても扱いやすいものでした。
使ったテキスト等については、コチラをご覧下さい。
http://www.104ka.com/2007/07/post_368.html
4.その他
このブログをご覧の方はご存知とは思いますが、うまくスケジュールを組めば、学期中に海外旅行に行くことも可能です(もちろん行きたい場合は、ですが)。
ということで、夏学期でした。
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