会社は頭から腐る―再生の修羅場で見た日本企業の課題

産業再生機構の専務取締役COOを務めた著者が、現代の日本におけるマネジメントの問題点を鋭く分析しています。
経営というのはMBAでやるような理論どおりにいくものではないと。なぜなら人間をマネージしていかなければならないからだ、と。

人間が真に客観的地平で物事を認識し合理的に行動することなどあり得ないのだ。だから人間を理解する努力、理解する修練、さらにはそういう人間に自分の思い、考えを理解してもらう努力と修練が極めて大事である。(P.4)

会社は頭から腐る―再生の修羅場で見た日本企業の課題
冨山 和彦
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MBAでマネジメントの基礎を一通り勉強した後にこの本を読んだことによって、勉強する前に読んだ場合と比べてより深く理解できた気がします。特に、MIBSで勉強したことって意外と役に立つ気がします。MIBSで勉強した知識そのものが正しいかどうか別として、マネジメントを考える場合にどのような視点で考えていくべきかという意味において。

今直面している仕事の方向と、個人的なインセンティブの方向が根本的に違えば、よほど「強い」人間でなければ仕事に身が入るはずがない。(P.13)

戦略は正解を用意してくれるものではなく、あくまで仮説である。この仮説があるからこそ、正しい検証が可能となる。(P.45)

統治機構に関する理念や哲学といった上位概念なしで、いきなりテクニックとして「委員会等設置会社にしました。これでガバナンスは働きます」などというのは、明らかな間違いだ。その意味では、日本のガバナンスに関する議論はまだ未熟である。(P.150)

各社それぞれの事情を考慮に入れず、あらゆる企業に対してガバナンスの唯一の最適解があるかのような議論をすることは間違いである、と。つまり、コンティンジェンシー理論の枠組みでガバナンスを考えるべきである、ということなのでしょう。

こうした人間(そもそも東京大学や慶應義塾大学を出ているような人間)に終身型の昇進システムを用意するのは、今や多くの産業分野で、弊害の方が大きい。インセンティブがどんどん内向きに閉塞していくからである。部長や取締役になるに従い、マーケットで戦えなくなっていく。本来、外に向かってパイを大きくしなければならないプロフェッショナルの役割が、パイの中の椅子の取り合いのゲームを始めてしまう。(P.163)

たまにやたら社内のポリティックスに詳しい人っていますよね。もちろん、出世するためには大切なことなのかもしれませんが、マーケットで戦っていくためには専門性を高めていくことの方が大事なんだと思います。

ビジネスというのは、本気で相手をつぶそうと思って競争するものである。(P.189)

歴史観、哲学観、志という人格要件が、今の日本のマネジメント教育、エリート教育にいちばん欠けている。(P.210)

このあたりは、何のために働くかに通じるものがある気がします。
ちょっと引用ばかりになってしまいましたが、この本はかなりオススメです。一読の価値は間違いなくあると思います。

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