一棟ものと、区分所有ではどちらがよいか(4)修繕費用

一棟ものと、区分所有の比較4回目は修繕費用です。
今回も比較するにあたり、前提条件は以下の通りとします。

まず前提として、自己資金1000万円くらいで投資をする場合を想定しておきます。 一棟ものであればローンを借りて5000万円程度の物件(木造アパートか、かなり小型のマンションあたりでしょうか)、区分所有であればローンを借りてワンルーム3つ購入、といったイメージでしょうか。

修繕費用については、一棟ものと区分所有で決定的に違う点があります。それは、売買の際、売主側がそれまで積み立ててきた修繕積立金を、買い主が引き継げるかどうか、という点です。例えば、一棟もののオーナーが、売却時まで何が起こるかわからないということで、月々3万円を積み立ててきていて、累計108万円貯まっていたとします。外壁が傷んだり、屋上防水が傷んだり、などと修繕が必要になった場合に備えて積み立てて来たとしても、売買した瞬間、その積み立てて来たお金は買い主が引き継ぐことはありません。あとは買い主さんの責任で勝手にやって下さいね、ということになります。
一方、区分所有の場合、管理組合で修繕積立金を毎月区分所有者から徴収しますが、仮に売却したとしても、それまで積み立てるために拠出してきたお金は回収することはできず、あくまで管理組合で管理、所有されていますので、買い主側に引き継がれることになります。例えば、区分所有の物件が総戸数60戸のマンションで、修繕積立金が全体で3000万円貯まっていたとすると、(仮に60戸の面積がすべて同じだとすれば)単純に
3000万円 / 60戸 = 50万円 / 戸
となり、50万円の修繕積立金を引き継ぐことになります。もちろんこの50万円は、特定の区分所有者に明確に紐付けがされているわけではありませんが、新所有者は、1円も拠出していなくても、これまでの所有者が積み立てて来た修繕積立金を実質的には引き継いでいるのと同じことかと思います。
もちろん、マンションによって、同じ60戸のマンションでも、修繕積立金が600万円しか貯まっていない物件もあれば、1億円貯まっている物件もあるかと思います。多ければ多いに越したことはありませんが、直近に大規模修繕工事をやったかどうかなど、過去の工事履歴によっては積立金額が小さくても妥当と思われる場合もありますので、過去の修繕工事の履歴をきちんと確認した上で、判断する必要があります。
いずれにしても、一棟もの、区分所有(物件全体としては一棟もの)のいずれについても、修繕は必ず発生するわけであり、その積立金を引き継げるかどうか、という点は決定的な違いであり、その点においては、区分所有を購入した方が安心感は高いと思います。
もちろん一棟ものであっても、将来の修繕を見越して大幅な指し値が通ったりすれば、結果的に割安な場合もあるかと思いますが、一般的には修繕積立金を引き継げないので、区分所有の方が有利という結論になるかと思います。
ということで、修繕積立金でした。

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