経営意思決定の原点

経営意思決定の原点
経営意思決定の原点 清水 勝彦

日経BP社 2008-07-31
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経営意思決定の原点
内容紹介
『戦略の原点』に続くテキサス大学流MBAシリーズの第二弾。前著と同様、MBAレベル、つまりやさしい解説でケーススタディをたっぶり紹介しながら、組織の戦略的意思決定についての勘所をコンパクトに解説する。
本書のハイライトは、意思決定にみられる「病」の分析。
(1)決められない(優柔不断)、
(2)決め急ぎ(拙速による失敗)、
(3)決めただけ(決定しても実行されない)、
(4)決めっぱなし(意思決定の見直しがなされない)、
(5)決めすぎ(実行途中で次々と変更される)
を取り上げ、それぞれの「病」の背景を詳しく解説する。
さらに、意思決定の理論的枠組みと組織の意思決定力を高めるための方法についても詳しく説明されている。
世界的にデフレからインフレへと大きく潮流が動くなか、経営意思決定を再考するのにふさわしい1冊。
目次
はじめに
第一部:経営意思決定の基本要素
個人と経営意思決定
(1)良い意思決定
(2)心理的な意思決定の落とし穴
 1.「Seeing is believing」は本当か?:選択的認識
 2.態度が変わるから行動が変わるのか?:認識の不整合の解消
 3.「そうなると思っていたよ」?:記憶とヒンドサイトバイアス
 4.基準が違えば答えも違う?:アンカーリングと目立つ情報の効果
 5.成功は自分の貢献、失敗は環境のせい:因果関係の根本的なエラー
 6.半数はトップ一〇%?:自信過剰
 7.これだけの証拠があるから間違いないはずだ?:正当化バイアス
グループと経営意思決定
(1)三人寄れば文殊の知恵?
(2)グループシンク
(3)グループの圧力と少数派の役割
組織と経営意思決定
(1)限られた資源のトレードオフ
(2)競合の反撃
(3)意思決定は出発点
ミニケース1:アサヒビール:スーパードライのあと
第二部:組織の経営意思決定に見られる病状
決められない:優柔不断
(1)「決めるべきなのに決めないのか」「決めるべきでないから決めないのか」
(2)決められない理由
 1.「何もしないこと」が心地よい
 2.確信の持てる選択肢がない
 3.どうせできない
(3)「決められない」ことの副作用
決め急ぎ:拙速
(1)「準備」が決定の質を決める
 1.成功体験と心理的なバイアス
 2.早く決めて楽になりたい
決めたはず:決定事項が実行されない
(1)意思決定に従わない組織
 1.決定の目的化
 2.経営と現場との認識ギャップ
 3.忙しい!
決めっ放し:決めたことの評価・見直しの欠如
(1)評価と見切りの大切さと難しさ
(2)「決めたこと」が「自然死」する問題
 1.測らない
 2.現場の状況がトップに伝わっていない
決めすぎ:頻繁な変更による資源の浪費
(1)経営と「朝令暮改」
(2)「朝令暮改」の問題
(3)決めすぎてしまう理由
 1.成功体験
 2.失敗体験
ミニケース2:シアーズとKマート
第三部:組織の経営意思決定力を高める
敏感力
(1)経営意思決定プロセス再考
(2)網を張る
コミュニケーション力
(1)戦略意思決定とコミュニケーション力
(2)リーダーのコミュニケーション力
(3)現場のコミュニケーション力
(4)コミュニケーション力の根底にあるもの
バランス力
(1)コミットメントvs見切り
(2)自信(夢)vs現実(問題)
(3)個人vsグループ(組織)
 
ミニケース3:GAP
あとがき

http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P46950.html
個人の意思決定だってやさしいものばかりではありませんが、組織の意思決定というのは本当に難しいものなんだと思います。そして、失敗をしてしまうと、これまた取り返すのが難しい事項が多いのではないかと思います。会社の経営って、ほんとに難しいですね。

(前略)成果主義で何でも解決できると安易に判断してしまった会社はしっぺ返しを受けても当然だろうと思います。結局、金銭が動機付けの大きな要因であることは間違いないのですが、金銭的報酬「だけ」にしてしまった瞬間、これまで「会社のため」だったり、「仕事が面白い」と思って働いていた人たちが、「結局、俺たちは金で買われているのか」と考えや態度を改めざるを得なくなるように強いられたのです。(P.27)

金銭的報酬が大きな要因ではあったとしても、それだけにしてしまっては、強い組織を作ることはできないのだと思います。

もちろん、競争相手に比べて業績が良い方がいいに決まっています。しかし、歴史も、文化も、戦略も違うのです。「大手インベストメントバンクだから」「マスコミによく並んで取り上げられるから」だけでライバル視し、自社の戦略や強みを顧みず、闇雲に業績を競ったとすれば、そこに無理があったのもうなずけます。(P.39)

同じ業界に属しているといっても、「歴史も、文化も、戦略も違う」のであれば、業績だって違ってきて当然ですね。

冒頭で挙げたミンツバーグ教授の言葉「Strategy can be described as a pattern in a stream of decisions.」の通り、一つの経営意思決定がなされた後、さまざまな関連する意思決定を積み重ね、競合の動きも踏まえて軌道を修正しながら効果的な実行ができてはじめて投資はリターンとなって戻ってくるのです。(P.88)

戦略は、戦略を決めるだけではなく、その後の外部環境の変化も考慮しながら、きちんと実行して初めて成果につながると。そういう意味では、スタティックなものではなく、非常にダイナミックなものと言えるかもしれません。

本田宗一郎氏を支えた藤沢武夫氏の言葉を借りるまでもなく、経営とはマラソンを何度も何度も走るようなものです。一つのレースでいいスタートを切る(良い決定をする)のと同じか、それ以上に、どのレースを走るか、そして駆け引きを踏まえてどうフィニッシュするかが重要なのです。(P.93)

偉大な経営者は、たとえ話がとてもうまいですね。

トリンプ・インターナショナル・ジャパンの社長を長く勤められた吉越浩一郎氏は、コミュニケーションで最も大切なことは、情報を共有化して「判断のベースとなる『常識』が何なのかを、全員が共通認識として持つ」ことであり、「組織内の常識レベルを高める」ことがリーダーの責任であると指摘されています(『デッドライン仕事術』)。(P.188)

こういった全員が共通認識として持つ、というのはグローバル企業で、経営陣が様々な母国、文化等を持っている場合、さらに難しい気がしますが、一方で、ますます重要になってくるのではないかと思います。

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