OTC derivatives は Correlation derivatives

投資一族の長さんから、CDSはCorrelation Derivativesというトラックバックを頂きました。
「Credit業務従事者から猛反発を覚悟の上」とありましたが、猛反発どころか完全に同意します。それどころか、Correlation derivativesはCDSだけではありません。OTC derivativesすべてに言えることでしょう。クレジットのみならず、金利であっても、エクイティでも、FXでも、コモでティでも。
今回のAIGのデリバティブのポジションがどのようなものだったのか詳細は知りませんが、なんかCDS(すでに書いたようにクレジットデリバティブの一種です)だけが悪者にされているような気がしてなりません。
もちろん、今回のAIGの場合はクレデリのポジションが大半を占めていたのかもしれません。しかし、本質的にはOTC derivatives全般のカウンターパーティーリスク(Counterparty risk)に関する問題であって、クレデリだけの話だとは思えないのです。
一般的に、金融機関がデリバティブ取引を行った場合、カウンターパーティーに対するエクスポージャー(信用リスクの額であり、再構築コストを元に計算される)を計算します。具体的には、その計算時点におけるエクスポージャーであるカレントエクスポージャー(Current exposure)と、将来における市場の変動を考慮したポテンシャルエクスポージャー(Potential exposure、もしくはピークエクスポージャー、Peak exposure)なるものを計算して管理しています。
そして、日々これらのエクスポージャーを計測しながら、クレジットラインをモニタリングしているのが一般的でしょう。そして、必要に応じて、CSA(Credit Support Annex)と呼ばれる担保契約をカウンターパーティーと結ぶようにしています。
一般的に、エクスポージャー計算の元になっている原資産価格とカウンターパーティーのクレジットの相関が高い場合、カウンターパーティーリスクは非常に高いと言えるかと思います。
例えば、コモディティ系のデリバティブ契約をその産出国(このコモディティがその国のクレジットに影響を及ぼすほど、その国の経済基盤に密接な関係がある場合)と結ぶ場合、カウンターパーティーの影響は非常に大きなものとなることが予想されます。
さて、やっとクレジットデリバティブの話に戻しますが、例えば、トヨタ自動車のCDSをトヨタ自動車の子会社から買ったところで、そのCDSはほとんど意味がないのではないか、ということになるかと思います(親会社であるトヨタ自動車がデフォルトしているような場合、その子会社であるカウンターパーティーもデフォルトしているでしょうから)。
そして、投資一族の長さんが「米国債のCDSに、USD建は無く、EUR建しかありません。」とおっしゃっていましたが、日本銘柄でも、日本ソブリンと主要銀行銘柄(例えば、東京三菱UFJ銀行など)のCDSは基本的に米ドル建てで取引が行われています。
つまり、日本国や日本の主要銀行のクレジットが急速に悪化する局面では、通貨としての日本円も弱くなっていることが予想されるので、そのようなリスクを回避するために米ドル建てで取引が行われているのでしょう。しかも、もしそのカウンターパーティーが日系金融機関であったりしたら、、、となるかと思います。
以上、長々と述べてきましたが、最近ではOTC derivativesのプライシングにカウンターパーティーとの相関を織り込んだりすることも研究されており、金融機関のカウンターパーティーリスクに対する意識が非常に高くなってきていました。そのような矢先に、今回のリーマン破綻が起きているわけです。
進んでいる金融機関では、CDSを使ってOTC derivativesのカウンターパーティーリスクをダイナミックにマネージしているところもあるかと思います。しかしながら、それが実際にどれほど機能するかは、かなり難しい問題だと思われます。
CDSの場合、たまたま原資産がクレジットというだけであって、クレジットとクレジットの相関を考慮すべきCorrelation derivativesととらえることも至極真っ当な発想ではないかと思います。

4 件のコメント

  1. 投資一族の長 返信

    確かにCDSだけではないですね。
    エクデリもOTC Derivativesゆえ、信用危機という疑心暗鬼のお陰で私は追い風です。
    米系金融機関のカウンターパーティーリスクを全員が感じてくれているので欧・日は有利。
    コンペティターが減っている。
    無効になったBack to Backの再構築リクエストが来る。
    Back to Back=No Riskではなくなったので、社内の自己部門不要論を叩き潰すのが容易。
    それにしても早朝からの即レスは笑いました。
    私も挑発に弱いので、昨日は約束を30分遅らせて、TB記事を書いていました。

  2. yokoken 返信

    いろいろな報道を見ていると、カウンターパーティーリスクとCDSをごっちゃに扱っているように思われるので、なんか誤解しているのでは、と思ってしまいます。
    マーケットがマーケットなだけに、米系以外にとっては追い風ですよね。
    会社行く前の時間使ってがんばって書きましたよ。

  3. micca 返信

    すみません、全く投資等の知識はないのですが、「ING DIRECT銀行」を検索していて、たどりつきました普通の人です。私は現在アメリカ(L.A.)に住んでいて、来年はじめに帰国する予定のmiccaと申します。はじめましてー。コメントに書かずにメールなどが良い内容かもしれないのですが、突然メールをお送りするのも失礼かなと思い、コメントに記入させてもらいます…
    けど他の記事を読んでいてもとても参考になって、これからたまにのぞかせてもらおうかなぁと思っています。
    お聞きしたかったのは、最近ING DIRECTを知ったのですが、こっちで仕事をしていたのである程度貯蓄もあり、どうやって日本に持って帰ろうかと考えているところなのです。アメリカの銀行はクローズしてしまう予定で、もしING DIRECTが日本でも使えるのであれば、一回そっちに移して、日本でレートのいい時に引き出したりとか…と考えたり、そもそも日本の銀行に比べたらものすごく良い利回りなので、手数料もカバーできるなぁとかそんなことをもくろんでいたんですが、可能だと思いますか?去年の記事で日本でも営業する予定というものを見つけたのですが…
    すみません、長いっ(;>_

  4. yokoken 返信

    miccaさん、コメントありがとうございます。
    アメリカから日本に帰国されるんですね。ぼくの場合は、イギリスで使っていたING DIRECTの口座は閉じてしまい、Barclaysの方はいまだに持っています。しかし、基本的にはほとんどのポンドを日本の証券会社の外貨建てMMFに直接入金しました。
    外貨でそのまま入金でき、かつ銀行の外貨建て預金と比べると利回りも高めなので外貨建てMMFにしました。
    為替手数料という意味では、ソニー銀行も安いと思い、検討したのですが、その後の運用を考えると外貨建てMMFにしておいて、タイミングを見ながら外債に切り替えるというのがよいかなと思っております(米ドルであれば、米国株式もよいかもしれませんね)。
    ちょっと話がそれてしまいましたが、INGでどの程度取り扱ってもらえるのかは正直知りませんので、直接のお答えは難しいですが、日本の銀行や証券会社に直接外貨で入金を受けてくれるかどうか、その際の手数料を問い合わせてみられるのがよいかと思います。基本的には可能なはずです。
    日本の米ドルMMFはリーマンの債券を保有していないという話ですが、ものによっては外貨建てMMFは元本リスクがあるという点はご認識頂ければと思います。

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