社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流

社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流 (岩波新書)
斎藤 槙
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著者自身が社会起業家であることもあって、社会起業家の生の声がよく伝わってきます。社会起業家に関して、とりあえず一冊読みたいという場合にはとてもよい本だと思います。

現代の社会起業家は、自分に与えられた人生を価値あるものにしたいと考えている人たちだ。「人生の意義」を土台に据えて、その上にさまざまな価値を築き上げ、その実現に向けて、積極的で主体的な生き方をしていこうとする。すこし大げさに言うと、「いったい何のために生きているのか」と自分の存在を見つめなおし、その問いに対する答えとして事業を起こしているのだ。 P.3

必ずしも事業を起こさなくとも、社会起業家的なメンタリティーを持って、人生を歩んでいきたいですよね。

環境にやさしいアウトドア衣料で知られるパタゴニアのイヴォン・シュイナード、地球上に住む六十億人のための食卓を用意することをテーマに、レストラン経営をするジュディ・ウィックス、障害者であってもなくても使えるバリアフリー商品の開発を進めた星川安之、倫理的な日本の企業調査を手がけるインテグレックスの秋山をねなどはみんな、市民の素朴な疑問に満足な答えを示してくれる事業だ。 P.65

こういった社会起業家の方々の活躍が紹介されています。CSRだけでなく、SRIの話も出てきます。

第二世代の社会起業家にとって、会社の成長率は経営の重要なポイントだ。もっと言えば、「会社を急に成長させすぎないこと」が大切である。売り上げと社会責任とのバランスを取ることが、大事な優先事項となっている。 P.117

CSRが最近は非常に注目されていることもあって、一般的な企業であってもこういった視点は重要になってきていると思います。売り上げだけでもだめだし、社会責任だけでもだめだし、その間のどのような位置でバランスを取るか、というのは企業によって異なってくるとは思いますが。
環境や社会問題に配慮した「グリーンMBA」と呼ばれるMBAプログラムや、MBA取得者の意識の変化などにも触れています。

私は、「悪」に関して少し違った考えを持っています。善いことをするチャンスや能力があるのに、それをしないことは、悪だと思うのです。悪は必ずしも能動的な行動というわけではなく、善の欠如も悪だと考えているのです。 P.148
それでもやはり、環境を破壊することは避けられない。そこで、「私たちは自分自身に税をかけることにしました」。売り上げの1%か税引前利益の10%のどちらか高いほうを、環境への投資に使うことにしたのだ。イヴォンはこれを、自主的な「地球税」と呼び、2002年に二百四十万ドル(約二億六千四百万円)を三百以上の団体に寄付した。 P.151
アメリカン・ドリームとは、自分の会社を持ち、できるだけ早く成長させて売却し、ゴルフコースに引退すること。ビジネスそのものが、製品になっているのです。短期的な帳簿では、従業員研修、社内育児施設、汚染物質管理、快適な職場環境などの長期投資は、すべてマイナス要因です。企業が利潤に魂を売りわたす時、家族の絆を崩壊させ、地球経済の長期的な健全性を損なう。使い捨てのビジネスという概念は、社会のすべての側面に持ち込まれるのです。 P.152

これらのコメントは、すべてパタゴニアのイヴォン・シュイナードによるものです。できるのにやらないというのは、やはり悪なんでしょう。どんな小さな事であっても、まずは敷居の低いことから少しでも社会貢献をしていきたいものです。

貧しい国では、子供は学校に行くより働いています。学校が無料でも、必要な本が買えないのです。そんななかで、巨大企業が進出してくる。そういった国でこそ、社会的な調査が必要なのです。たくさんの人が飢餓で苦しんでいます。十億の人が一日一ドル以下で暮らしているのです。彼らに、優先順位を与えるべきだと思います。 
アリス・テッパー・マーリン P.167

地球規模、人類全体としての視点を持った場合、プライオリティはどこに行くのでしょうか。日本国の日本国民といった立場とは、かなり見方が変わってくるのではないでしょうか。普段からいろいろな視点で物事を捉えていけるようになりたいものです。

社会起業家から教わった 生き方、働き方の極意
1 自分の好きなこと、楽しいことに夢中になろう。
2 いろいろな人と喜びや悩みや夢を分かち合おう。
3 効率を優先させない。何が大切かを見極める。
4 かわいい子には旅をさせよ。かわいい子だけでなく、自分がかわいい大人も旅に出よう。きっと名案が浮かぶから。
5 おかげさまの気持ちを忘れずにいよう。
6 あきらめるから失敗する。成功するまで頑張ろう。
7 人と競争するのではなく「協奏」しよう。
8 人生に無駄はない。一見、マイナスなことでもそこから何かが見えてくる。
9 人がどう思うかではなく、自分がどう思うかを大切にしよう。
10 たまには自分を褒めよう。
皆様にも元気が伝わりますように。そして生き方、働き方のヒントになりますように。 P.243

この著者も含めて、こういった社会起業家の方々が活躍している姿を見ると、元気をもらえる気がします。日常の小さな事で悩んでる場合ではないなぁ、と。
この本、オススメです。

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