IPO時における取引所の選択基準

昨日のcross listingに対するモチベーションに引き続き、今日はIPO時における取引所の選択基準について書こうと思います(ぼくの試験勉強です)。あまり長く書くと疲れるので、軽めにします。
日本でIPOと言えば、日本国内の証券取引所に上場することが一般的かと思いますが、授業のケースで扱った企業の場合、ノルウェーの企業でありながら、地元のオスロ証券取引所に加え、ニューヨーク証券取引所など海外上場の可能性も選択肢に入っていました。
ということで、昨日のcross listingの際に挙げた選択基準もあるのですが、それに加えて以下のような点が考慮されるようです。

  1. イニシャルコスト

  2. これは上場させるにあたって、取引所による審査などに要する費用です。取引所によって費用は異なります。

  3. ランニングコスト

  4. これは上場させた後に、上場を維持させるためにかかる費用です。例えば、上場株式数に応じて課金されたりします。

  5. 上場までにかかる時間

  6. 簡易な審査で済むところもあれば、厳格な審査で時間がかかるところもあります。8週間から12週間程度が一般的なようです。

  7. アナリストカバレッジ

  8. その取引所に上場されている企業をカバーするアナリストがどの程度いるか、ということです。例えば、日本企業が日本の証券取引所に上場されれば、アナリストにカバーされる確率はそれなりに高いと思いますが、アメリカに直接上場しようとした場合、アメリカのアナリストがどれほどカバーしてくれるかは疑問です。アナリストにカバーされることがなぜ重要なのかと言うと、レポートなどの形でその企業に関する情報がより多くの投資家に行き渡り、それによって投資家が投資の判断をしやすくなり、バリュエーションが上がることが期待できます。また、結果的に投資してくれる投資家が増える、投資家あたりのリスク負担が減少、よって株式資本コストの低下といったメリットもあります。
    一方で、アナリストカバレッジはそれほど単純な話でもなく、適切なセクターがある市場に上場することが大切になってきます。例えば、ハイテク企業が、重厚長大産業に属する企業ばかりが上場している取引所に上場しても、きちんとカバーできる能力を持つアナリストがいない可能性もあります。その場合、バリュエーションに悪影響が出る可能性が高くなります。また、企業によっては属するセクターがM&Aなどによって変わる場合もあり、そのような際に適切なアナリストにカバーされることが重要になってきます。例えば、一昔前のソフトバンクはインターネット・カルチャー事業、ブロードバンド・インフラ事業がメインでしたが、現在では移動体通信事業の占める割合が非常に大きくなり、通信セクターのアナリストにカバーされるようになっています。
    ちなみに、ソフトバンクのアナリストカバレッジはこちらから確認することができます。

  9. 流動性

  10. これは市場によって、厚みが違います。市場参加者が多ければ多いほど、取引が活発になり、より適正な価格がつく可能性が高くなります。また、その企業に対する注目のみならず、後述するインデックス運用の影響によっても、流動性は影響を受けることになります。

  11. 時差(タイムゾーン)

  12. 欧州の企業が直接ニューヨーク証券取引所に上場した場合などは、時差があるためいろいろと手間がかかります。

  13. 投資家の多様性

  14. ドメスティックな市場とインターナショナルな市場という意味では、外国人投資家の存在感によって、投資家の多様性がかなり変わってきます。また、個人投資家が多いか、機関投資家が多いか、によって資金の質やスピードも変わってくることが考えられます。

  15. ディスクロージャー規制

  16. これは企業の情報に関する開示義務制度ですが、取引所、さらにはメイン市場(例えば、東証一部)か、新興市場(例えば、マザーズ)かによっても異なります。これは昨日触れたので、ここでは詳細は省きます。

  17. 会計基準

  18. US GAAPなのか、IAS/IFRSなのか、など現在採用している会計基準と異なるもので開示しなければならない場合は、そのためのコストが発生します。

  19. コンプライアンス&各種規制

  20. アメリカで言うところのサーベンスオックスレー法(SOX)を遵守するためには、非常にコストがかかると言われています。また、ノルウェーでは、取締役の40%以上が女性でなければならないようです。国によって、これら規制の程度は異なります。

  21. インデックス

  22. 取引所によって、どの程度インデックスが充実しているか、が異なります。例えば、東証一部に上場している企業であれば、TOPIX採用銘柄となり、TOPIXに連動させて運用している投資家が機械的にポートフォリオに組み込むことになります。
    例えば、最近では「S&Pと東証、イスラム投資家向け日本株指数を開発」というニュースがありましたが、このインデックスに採用されることによって、イスラムの投資家に投資される可能性が高くなるわけで、インデックスに採用されるかどうかで投資家層の厚みが変わってきます。

以上、駆け足でIPO時における取引所の選択基準を見てみました。こうしてみるといろいろありますが、これだけあるとこれらを一つ一つ検討しているとは思えないのですが、実際のところどうなんでしょうね、、、

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