決定版 リアル・オプション―戦略フレキシビリティと経営意思決定

けっこう有名そうな本だったので、こちらも読んでみました。リアルオプションそのものを理解するという意味ではこちらの方が参考になりました。
決定版 リアル・オプション―戦略フレキシビリティと経営意思決定
トム コープランド ウラジミール アンティカロフ Tom Copeland
4492601074
「リアル・オプションとは」から始まって、「正味現在価値(NPV)、ディシジョン・ツリー、リアル・オプションの比較」、「単純オプションの数量化法」、「リアル・オプション評価のための4段階プロセス」などなど、基本的なことはほぼ網羅されていると思います。
そして、「ボラティリティの推計」などにも触れてあり、知りたいことが書いてあったという感じです。以前、コーポレートファイナンスの授業でリアル・オプションに触れた際、モンテカルロでボラティリティを推計するという話が出てきました。その時は、モンテカルロ使おうが、ボラティリティの推計は難しいはずだ、と思っていたのですがこの本を読んでその意味がはっきりしました(難しいことには変わりないのですが、、、)。つまり、リアル・オプションの原資産であるプロジェクトのボラティリティを算出するために、プロジェクトに影響を与えうる変数(例えばコモディティとしての金の価格など)についてモンテカルロでシミュレーションを行い、プロジェクトそのもののボラティリティを推計するようです(プロジェクトのNPVの分布を観測)。
でも、それって、個別の変数(金価格など)そのものの期待値とボラティリティ(および他変数との相関係数)は結局のところ、ヒストリカルデータだったり(過去と未来は同じなのか?)、マネジメントによる直感的な予測だったり(当たるのか?)に頼るわけで、それでいいのかなぁ、と正直感じてしまいます。NPVによる評価の最も弱い点は割引率の設定が難しい割には、割引率の影響を大きく受けるということだと思いますが、リアル・オプションの場合、その弱点から解放されたものの、今度はボラティリティの推計に頼る部分が大きく、こちらはこちらで実務的には容易ではない気がします。
しかしながら、NPVによる評価の場合、意思決定に柔軟性がなく相互排他的な選択肢の中から選ばなければならないという意味でプロジェクトを過小評価してしまう傾向にあるわけですが、リアル・オプションによる評価の場合、その柔軟性をバリューとして織り込んで評価するためにより現実的な評価になってくるものと思われます。
将来、リアル・オプションがNPV法に代わって意思決定の主流になるだろう、という著者の意見も納得できる気がします。
具体的なケースについても、けっこう詳しく述べられており、実務的な本としてそれなりに役に立つ気がします。リアル・オプションについて書かれた良書かもしれません。
ちなみに、先日エレクティブのリアルオプションについて、コースが始まる前の事前説明会みたいなものがありました。この科目はProf Dean Paxsonが担当されているのですが、以下のサイトに最新のトピックが掲載されていることを教えてもらいました。
http://www.realoptions.org/index.html
Real Options に関する国際会議で、Prof Dean Paxsonや、先日読んだ本の著者今井潤一先生も参加されているようです。興味のある方は参考にされるとよいと思います。
それから、コーポレートファイナンスで有名な以下の本のリアルオプションの章もよく書かれていると推薦されていました。
Corporate Finance with Student CD, Ethics in Finance PowerWeb and Standard & Poor
Richard A. Brealey Stewart C. Myers Franklin Allen
0071117997
早速読んでみました(正確には読み直してみた?)が、確かに分かりやすく書かれていました。ただ、内容的にはかなり限定的です。本格的にリアルオプションを勉強する場合は、やはり上記の本がベターだと思われます。

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