VCICに行ってきました

Venture Capital Investment Competition(VCIC)のヨーロッパ予選がロンドンビジネススクールで行われたので、それに参加してきました。参加校は、Cranfield, Erasmus(Rotterdam School of Management), HEC, IESE, INSEAD, Judge(Cambridge), Manchester です。Said(Oxford) も参加する予定だったのですが、急遽辞退してしまったようです。
このコンペティションでは、学生がベンチャーキャピタルの立場になって、本物のアントレプレナー(企業家)が提案するビジネスプラン(5つ)を分析・評価し、最終的にどのビジネスに投資をするか決定するというものです。そして審査するのは実際のベンチャーキャピタリストです。
スケジュールは以下の通りでした。
3月1日
19:00 5種類のビジネスプラン(20〜50ページ程度の印刷されたもの)配布
3月2日
13:00 アントレプレナーによるプレゼンテーション(10分×5)
14:00 デューデリジェンス(15分×5)
3月3日
10:00 Executive Summary & Term sheets 提出締め切り
13:00 プレゼンテーション用のパワーポイント提出締め切り&プレゼンテーションスタート
16:00 審査結果発表&審査員から各グループへのフィードバック
5種類のビジネスプランがまず配られるわけですが、それぞれ2部ずつ配布されます。5人チーム(イギリス人2名、インド人2名、日本人1名)なので、5部ずつ配ってくれると便利なのですが、なぜかルールで2部と決められています。受け取った後速やかにホテルに戻り、事前に立ててあったスケジュール通りに、ローテーションしながらビジネスプランを読んでいきました。この時は、要旨(エグゼクティブサマリー)の部分のみを読み、ビジネスモデルをきちんと理解することに努めました。
その後、各自の各ビジネスプランに対して理解したことをシェアし、グループとしての理解をまとめていきました。その後は各自に2つのビジネスプランを割り当て、そのビジネスについて徹底的に理解するように努めました。次の日に、実際のアントレプレナーによるプレゼンテーションおよびデューデリジェンス(アントレプレナーとのミーティングでいろいろと不明なところを質問できます)があるので、それに向けた質問リストも作成していきました。初日にぼくが寝たのは午前3時頃でした。3時間弱睡眠を取ることができました。チームメイトの中には1時間弱しか寝なかった人もいました。
2日目の午後は、アントレプレナーによるプレゼンから始まりました。動画を使ってビジネスを説明したりする人もいて、ビジネスプランからだけでは理解できなかった点もいくつか解消されました。
その後すぐにデューデリジェンスが始まりました。各グループごとにアントレプレナーと個室でミーティングを行っていきます。この際に、審査員が同席してぼくらの質問が適切なものかどうか、ベンチャーキャピタルとしての適切なコミュニケーションはできているか、などの観点から採点します。最初はかなり緊張していたものの、回を重ねるにつれて、徐々にスムーズにミーティングを進行させられるようになっていきました。
デューデリジェンスが終わると、ホテルに帰ってどのビジネスがベンチャーキャピタルの観点から最も魅力的か分析・評価していくことになります。ぼくらのチームは、不動産検索サイトを運営する予定の会社を選びました。運営する予定というのは、プランがあるもののまだ実際の運営は始まっておらず、まだテストを行っている段階という意味です。ベンチャー企業のステージで言えば、シードから1st ラウンドの中間あたりに相当するかと思います。
2日目の夜も、Executive Summary (どのように分析して、5つのビジネスプランからどれを選んだか、をA41ページにまとめるもの)、Term sheets (日本語だとおそらく、投資契約書。投資リスクを抑えるために、状況に応じて Liquidation Preference, Antidilution, Option Pool などを条件を選んで書いていきます)、そしてプレゼンテーションのパワーポイント(これも主旨はExecutive Summaryとほぼ同様ですが、より詳細を記述します)の準備に追われ、睡眠は3時間ほどでした。ぼくはかなり寝た方です。人によっては2時間弱しか寝られなかった人もいました。
ちなみに、2日目の夜は突然ホテルのインターネットが使えなくなるというトラブルに見舞われました。リサーチができなくなってしまい、かなり厳しい状況に追い込まれました。
Executive SummaryとTerm sheets をなんとか時間までに提出し、プレゼンの時間を待ちます。ぼくらのチームは7チーム中の5番目でした。プレゼンは6分間で、その後9分間は審査員からのかなり厳しい質問が飛んできました。ズバズバ指摘してきます。バリュエーションのあたりではかなり突っ込んだことを聞かれ、うまく答えることができませんでした。
全てのプレゼンが終わると、結果発表です。ロンドンビジネスクールのバーでビールを飲みながらの発表でした。優勝はINSEADでした。後から審査員の方に伺ったのですが、優勝チームは各分野でまんべんなくスコアが高かったようです(逆に言えば、各分野での最高スコアは一つもなかったようです)。ぼくらのチームはプレゼンのところではかなりよかったようなのですが、他の部分があまりよくなく、総合評価ではトップ2まではいかなかったようです。
審査員の方からのフィードバックでは、アントレプレナーとのコミュニケーション、バリュエーション、ビジネスに対する理解、などの点を指摘されました。Term sheets や、プレゼンテーションの部分はけっこうよかったようです。
ヨーロッパ大会で優勝してアメリカで行われるファイナルへ進出することはできませんでしたが、今回のコンペティションはとても勉強になりました。当日の約48時間にわたるコンペそのものもそうですが、今回の準備のためにいろいろなベンチャーキャピタルの方にアドバイスを頂いたり、チーム内で勉強会を開いたり、自分で本を読んだり、とかなりの時間を割いてきました。
今まで仕事上では上場企業しか扱ったことがなかったので、基本的にはDCFで評価できるケースしか知りませんでしたが、シード、1st ラウンド、2nd ラウンド、などの企業をどのように評価するか、とても参考になりました。
もしこのコンペティションに参加される機会があったら、かなりオススメです。もっともベンチャーファイナンスに興味がないとおもしろくはないと思いますが。
これでやっと普通のMBA生活に戻れます。あと2週間で授業も終わり、もうすぐ期末試験です。その前にはグループワークの締め切りも目白押し。でもVCICが終わって、とりあえず終わってホッとしました。
明日の予習をやらねば、、、
以下、参考文献です。
http://www.bvca.co.uk/ の Publications/Research のページにはとても参考になるレポートが掲載されています。
ベンチャーキャピタルからの資金調達術 VCがお金を出したくなるビジネスプランのつくり方
石割 由紀人
4827202346
日本語で書かれた本ということで買ってみました。けっこう幅広く日本のベンチャーキャピタルについて書かれています。とりあえずの入門と言う意味ではよいと思います。
Venture Capital Investing: The Complete Handbook for Investing in Private Businessesfor Outstanding P Rofits (Financial Times Prentice Hall Books)
David Gladstone Laura Gladstone
013101885X
ベンチャーキャピタルの立場からどのようにビジネスを評価するべきか、書かれています。自分たちのビジネスプランの評価モデルを作る際にはかなり参考になりました。Appendix にアントレプレナーに対する質問リスト(おそらく200〜300くらい)が掲載されています。
Raising Venture Capital (Wiley Finance)
Rupert Pearce Simon Barnes
0470027576
アントレプレナーの立場からどのようにベンチャーキャピタルを調達すればよいか、が書かれています。Pre-money valuation & Post-money valuation に関して、アントレプレナーからの評価と、ベンチャーキャピタルからの評価でどのように見方が異なるかといった点に関する説明は非常にわかりやすく書かれていました。
Term Sheets and Valuations: An Inside Look at the Intricacies of Term Sheets & Valuations (Bigwig Briefs)
Alex Wilmerding
1587620685
タームシートの準備のためには非常に参考になります。項目別に説明があり、各項目ごとに Investor Favorable(投資家有利), Middle of the Road(中間), Company Favorable(会社有利)の3パターンにわけてサンプルが掲載されています。またバリュエーションの部分は考え方が簡潔に書かれていて参考になりました。
Entrepreneurial Finance
Richard L. Smith Janet Kiholm Smith
0471230723
バリュエーションについて詳しく書いてありますが、ちょっとアカデミックすぎる気がします。実務的にどれほど使えるかは疑問です。CAPMのベータを使ったり、P/E multiple のところで回帰分析を使ったり、理論的には理解できるものの、実務的にはそうはきれいにいかないだろうという気がします。割引率が50%とか、100%とかそんな世界でベータとかをきちんと計算することにどれほど意味があるのかなぁ、と思います。ただいろいろと考え方を理解するためには、よい本だと思います。
MBA最新テキスト アントレプレナー・ファイナンス―ベンチャー企業の価値評価とディール・ストラクチャー
リチャード・L. スミス ジャネット・K. スミス Richard L. Smith
4502587605
上記の本は日本語版もあります。

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