物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進

ぼくの職業は会社員なのですが、具体的には証券会社でクオンツという仕事をしています。クオンツという言葉を言って、「ああ、クオンツね」と納得してくださる方はなかなかいません。一般的な言葉ではないからでしょう。そこでよく「クオンツって、何をやってるの?」と聞かれるわけですが、そのような疑問をお持ちの方にオススメしたいのがこの本です。
物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進
エマニュエル ダーマン Emanuel Derman 森谷 博之
4492653600
この著者は、素粒子物理の理論でPh.Dを取得後、ベル研究所を経て、ゴールドマンサックス証券に入社し、クオンツとして活躍した方です。現在は、コロンビア大学の金融工学プログラムディレクターだそうで、クオンツとして数々の賞を受賞している方です。デリバティブを扱うクオンツ仲間で、この人の名前を知らない人はいない、と言っても過言ではないでしょう。
そのような方が平易な言葉で、前半は素粒子物理学の博士課程時代を中心に、後半は金融業界に入ってからの活躍を描いています。平易といっても、前半の素粒子物理の内容については物理をかじったことのない方にはついていけないかもしれません。そのあたりは、まあそんなものなのね、ということで読み飛ばしても問題ありません。
クオンツとしてのレベルの違いは大いにあれど、ぼくも同じような仕事をしているわけです。クオンツ周りを志望されている就職活動中の学生さんなんかには特にオススメかもしれません。
この本を読んでひとつ思ったことにミーティングの時間があります。著者がソロモンに移ってからカルチャーの違いをいろいろと体験するのですが、その中にミーティングでの集まりの悪さが書いてあります。誰もが自分の時間を大切にしたいと思うがゆえに、開始時刻より遅れ気味にミーティングルームに向かい、誰も集まっていなかった場合は戻ってしまう。このようなことをすることによって、結果的には全員が時間を無駄にしている。そして、ゴールドマンサックス時代にはなかったことだ、というように述べています。耳の痛い話です。うちの会社も見習わなければならないと思いました。遅刻しない、というのは社会人の最低限のマナーですよね。

2 件のコメント

  1. あつし 返信

    難しくて鳥肌が立つような数式が実際の生活のなかで
    役にたっているんですね。
    あれ、そういえばクオンツってそもそもどういう
    意味なんでしょう。

  2. yokoken 返信

    たまに「数学なんて、社会に出たって何も使わないじゃないか!」というようなコメントを耳にすることがありますが、数学者以外にも数学をバリバリ使うお仕事も世の中にはあると思います。
    クオンツは、quantitative(定量的な)という単語からquants になったのだと思いますが、なぜ quants と呼んでいるのかはぼくもよく知りません。
    定量的な分析をする人、といった意味だと思います。

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