不動産投資と金融商品投資の税引後リターンの比較

利回りが高い、という表現がよく使われていますが、実際のところ税引後のリターンはどの程度なのか、簡単な例を使って考えてみたいと思います。
まず金融商品の方ですが、ここでは簡単のため、固定利付き債を考えてみたいと思います。現在の日本の状況ではあまり考えにくいものではありますが、クーポンが6%だったと仮定します。すると利子については20%の源泉分離課税になるので、リターンは
6% × (1 – 0.2) = 4.8%
となります。
一方で、不動産ですが、ここでは区分所有のワンルームマンションをイメージしてみます。物件価格が1000万円で、実質リターン(家賃収入から管理手数料等を差し引いた手取り収入)が7%だったとしておきます。この場合、税金は総合課税となるので、他に総合課税の対象となる所得がどのくらいあるかによって税率は変わってきます。金融商品の税率と同じでは面白くないので、ここでは税率を40%と仮定してみます。すると、リターンは
7% × (1 – 0.4) = 4.2%
となります。ということで、一見、税引後のリターンはワンルームマンションの方が低いように見えます。
しかし、すでにお気づきの方も多いかと思いますが、この不動産の方の計算は間違っています。不動産の場合、不動産所得に対して課税されることになるわけですが、上の計算では減価償却が考慮に入っていません(固定資産税はすでに入っているものとしておきます)。
ということで、減価償却を考慮にいれるために、1000万円のワンルームマンションで、建物分が7割、土地分が3割と仮定してみます。さらにここでは中古マンションだとして、償却期間を20年と仮定してみます。
すると、700万円を20年間で償却するので、1年あたり35万円の減価償却になります。すると、70万円の実質収入からさらに35万円を差し引いた35万円に対して、税率40%が適用されることになりますので、実質的な税額は
35万円 × 0.4 = 14万円
となりますから、税引後のリターンという意味では、70万円の手取り収入から14万円の税金を控除した56万円、つまり税引後で5.6%のリターンということになり、初めに挙げた債券のリターンを上回ることになります。
もちろん、減価償却の前提が異なればこの最終的な数字は変わってきますし、最終的に物件を売却した時の条件(価格や税率)によっても、最終的なトータルのリターンは変わってきます。
ただ、ここで言えることは、総合課税の所得税率と源泉分離課税の税率のバランス、そして資産そのものの税前のリターンおよび税後のリターン(減価償却の考慮)のバランスによって、税引後のリターンはいくらでも変わりうるということです。
つまり、不動産投資がいい、とか、金融商品投資がいい、といった議論はこういった個別の事例ごとに検討していかないと、一概には言えない、ということなのではないでしょうか。
ああ、難しい、悩ましい、、、

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